深刻なハレーションは避けられそうもない。阪神・藤浪晋太郎投手(25)ら3選手が新型コロナウイルス陽性となったことを受け、NPB(日本野球機構)も対応に追われた。27日には都内でセ・リーグ6球団による臨時理事会が開かれ、阪神・谷本修球団本部長は経緯を説明。目指している4月24日の開幕が不透明になりかねない事態となったことで球界内では「セ・パ分離開幕」や「開幕無期限延期」など物々しい提言が飛び交い、混迷を極めている。

 ピリピリとしたムードに包まれた。阪神で藤浪ら3選手が「コロナ陽性」だったことが判明。27日午後から開催されたセの臨時理事会では、阪神の谷本球団本部長が「プロ野球の開幕前の大事なときに感染者を発生させたこと」について謝罪すると、陽性反応が出た3選手についての経緯説明に加え、同理事会では開幕に向けた各球場での入場制限プランや東京五輪の延期による今季日程の再調整などが議題として話し合われたという。

 会議の時間は実に3時間半近くにも及んだが、目指している4月24日の開幕変更等の議論が行われたかどうかについて、セの理事長を務めたDeNA・三原一晃球団代表は「ないです。(延期したほうがいいというような)意見もないです」と否定。あらためて4月3日に開催予定の12球団代表者会議で話し合う方針を示した。

 だがプロ野球界から初めての感染者が出た事実は曲げようもなく、このままで済みそうもない。NPB周辺でも「観客をどうこうするというレベルの話ではない。現場の選手が感染してしまったのだから、他球団を含め安心して試合ができるような環境が整わなくなってしまったということ。しかも最大の問題は一人ではなく一気に複数の選手が罹患してしまった点だ。つまりクラスター(集団感染)が一つの球団から発生したのだから、これは開幕に向けてかなりの致命傷になる。残り1か月を切った4・24開幕に向けて『NPB全体は何の問題もありません』なんて言い切ったら、世間から猛批判を受けるのは間違いない」といった懸念が強まっている。

 同時に「次の12球団代表者会議は紛糾必至だろう」との見方が大勢を占めつつある。球界内からは「セの球団で感染者が出たのだから、パの球団側から『分離開幕案』が提案される可能性もある。4・24開幕を死守できなければ、降雨中止となるゲームのことも計算すると各球団が強く望む143試合の公式戦実施がクリアできなくなる恐れもある。そういう意味でパの6球団は、取りあえず自分たちのリーグだけでも先に強行開催させてほしいと主張してくるかもしれない」との声も出ている。

 それだけではない。パ6球団の間では「パ・リーグ2チームの有力オーナーが新型コロナウイルスの蔓延によって今季のシーズン実施を半ば諦め、来季にまでその影響が及ぶことを覚悟している」との情報が飛び交っている。NPB初となる複数選手の感染者発覚によって、今季開幕の「無期限延期」を覚悟している球団が複数あるということ。実際に「野球界がウイルスに関して『もう大丈夫』というイメージをつくり上げるためには、少なくとも3か月は見込まないといけない。そういう期間のことを考慮すれば、今季の開幕が難しくなるのは当たり前だと思う」と指摘する声もある。

“コロナショック”の激震に揺れるNPBと、セパ12球団。果たしてこの最大の危機を乗り越えられるか。