【赤坂英一 赤ペン!!】久々に“魅せる采配”をやる監督が現れた。「周囲には極端に見えるかもしれないけど、ぼく自身は極端だとは思っていません。すべては理由があって、根拠を持ってやってることですから」

 キッパリとこう言ったのは楽天の三木肇監督(42)。その言葉通り、先週末のオープン戦最終カード、巨人3連戦は大胆ながらも自信に満ちたタクトを振ってみせたのだ。一番の見せ場は14日、3―3と同点の9回一死二塁、打者・若林という一打サヨナラのピンチだった。三木監督は中堅・山崎幹を定位置より5メートル手前、二塁ベースのすぐ後ろにまで寄せる超前進守備を指示。結果は若林の投ゴロで、同点のまま逃げ切りに成功した。

「二走が足の速い吉川大くんだったので、何とか刺せないかなと思った。(内野手登録で今年から外野手兼用の)山崎幹が中堅だったから、ここは思い切って前で守らせてみようと。オープン戦や練習試合ではいろいろなことをやっていくよと、普段から選手たちにもよく話していますから」

 もし山崎幹の前に打球が飛べば大変珍しいセンターゴロ。そういう打球や場面を見たことがあるのかと聞いたら、「そうだな、あんまりないですね」と正直に話した。

 この試合、三木監督はオープン戦ではあまり例のないリクエストもしている。巨人を2―3と1点差に追い上げた6回、走者が三塁封殺でチェンジとなった直後だった。

「1点差までいったのにチェンジになるのと、二死三塁で同点、逆転のチャンスが続くのとでは、状況がまったく変わる。審判の方には失礼だったかもしれませんが、これもチャレンジだと思ってリクエストしました」

 判定は覆らずアウトのままだったが、「いまは失敗してもいい経験になります。ミスも財産のうち」とキッパリ、だ。

 その前日13日、2―2の同点だった8回には、初球スクイズで勝ち越し点をもぎ取った。バントした小郷はまだ2年目、長打力が売り物で犠打は公式戦でわずか1個。これもある意味、細かいようで大胆な作戦だった。「ああいう作戦を細かいと言われるけど、ボクはそうは思わない。打撃というのはすべてが細かい技術の集積ですから」

 15日も巨人に7―3で快勝し、オープン戦最終戦を8連勝で締めくくった。いつ開幕するかわからないが、早く本番で三木采配を見たいものだ。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。毎週金曜朝8時、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ!」出演中。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」(講談社)などノンフィクション増補改訂版が電子書籍で発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」(PHP文庫)など。最新刊は構成を務めた達川光男氏の著書「広島力」(講談社)。日本文藝家協会会員。