ソフトバンクの工藤公康監督(56)も注目の逸材だ。2017年育成ドラフト1位で入団した育成3年目右腕・尾形崇斗投手(20)に、指揮官は「彼にはすごく期待している。実際、いろんな使い方をイメージしているし、勝ちパターンでの起用も十分にある。今すぐということでもないが、去年の甲斐野みたいになってくれるかもしれないという期待をしている」と言ってはばからない。

 今春キャンプでA組入りし、オープン戦もここまで中継ぎで3試合連続無失点。フロントも才能と実力を高く評価し、支配下昇格が秒読み段階ながら「その先の青写真」を指揮官がここまで明確に描くのは異例だろう。

 工藤監督がほれ込む要素は多々ある。マウンド上では「おっりゃー」と気迫たっぷりに投げ込む熱投タイプで、トレーニングに励み過ぎて肋骨を折った努力家の一面も。私生活では入寮時に「脳に刺激を与え、感性も磨かれ、それが野球に生きる」と哲学的な書物も含めて70冊以上の本を持ち込んだ理論派でもある。そして何より評価されているのが、最速150キロを誇る浮き上がるストレートだ。

 データが証明している。「トラックマンデータでほぼ同じ数値だった投手がいるんです。阪神の藤川球児さんです」とは尾形本人の証言。球の回転数、ホップ成分の縦の変化量、ゼロに等しい横の変化量が酷似していたという。昨季、防御率1・77、奪三振率13・34と完全復活した虎の守護神の代名詞「火の玉ストレート」に引けを取らない直球を持っている。昨秋派遣された台湾のウインターリーグで、尾形の奪三振率は驚異の17・74。ここまでのオープン戦は同9・00で、三振を奪えなくてもバットが球の下を通過する空振りでカウントを稼ぐシーンを連発している。

「直球であれだけ空振りを奪える投手はなかなかいない。尾形と藤川くらいかな」とはフロントの適正評価。鷹の秘密兵器が希代の出世ロードを歩むかもしれない。