これぞ“サムライスピリット”だろう。巨人は1日に無観客で行われたヤクルトとのオープン戦(東京ドーム)に2―3で敗れた。新型コロナウイルスの感染拡大で日本列島がパニック状態に陥るなかでも、自ら来日を決断したのが今季からアドバイザーに就任したウォーレン・クロマティ氏(66)だ。来日の延期や回避することも可能だったが、あえてチームに合流した元最強助っ人の思いは――。

 鳴り物もファンの歓声も消えた東京ドームで、まず快音を響かせたのは吉川尚だった。初回にオープン戦1号アーチを無人の右翼席に放り込み、投げては先発の19歳右腕・戸郷が開幕ローテ入りを引き寄せる5回無失点の好投。原監督も故障がちな吉川尚を「2試合続けて人工芝でというのも難なくクリアしたし、収穫はあったでしょうね」とし、戸郷も「非常にいい位置だと思います」とたたえた。

 キャンプを終え、本格化するオープン戦を前にチームの輪に加わったのがクロマティ氏だった。前日2月29日からホームグラウンドに姿を見せ、練習中は日本人、助っ人に分け隔てなく助言を送り、持ち前の明るさで新たな活気をもたらしている。そのクロマティ氏が来日したのは“コロナパニック”真っただ中の2月27日。球界でも同26日には臨時の12球団代表者会議が開かれ、オープン戦残り全72試合を無観客試合とすることを決めた直後だった。

 特筆すべきは、来日するかどうかを含め、チームへの合流時期がクロマティ氏に一任されていた点だ。球団幹部は「彼も米国での仕事がある。だから、こちらから、いつまでに来てくれと要請することはない。来たい時に来てくれというスタンス」との立場を示した。新型コロナは世界規模で拡大しているが、米国では日本の混乱ぶりに比べればまだまだ“小規模”。そのまま米国にとどまり、来日自体を見送ったり、事態が終息するまで見合わせるなど、さまざまな選択肢があったはずだ。それでも、あえて海を渡ってきた理由は何か。クロマティ氏はハッキリとこう口にした。

「やることはやらなきゃいけない。自分には自分の仕事がある。自分の仕事はやらなくてはいけない」

 今季からアドバイザー契約を結び、球団OBの一人としてリーグ連覇と日本一奪回に何とか貢献したい――。その使命感からリスクを承知でチームに合流したわけだ。さらに、クロマティ氏は母国に家族を残し、異国の地で戦い続けるG助っ人陣にもメッセージを送った。

「どうやら世界はパニックを起こしている。(誰もが)知らないことだから、みんなが必要以上に恐れている。しかし、パニックになる必要はない。うがい、手洗い、マスク。我々はそういうことを理解し、アジャストしていくべきだ。それはジャイアンツにいる外国人選手も一緒。冷静に自分が何をすべきなのかを考えないといけない」

 今後も目に見えない敵との闘いは続くが、巨人勢はクロマティ氏の“男気来日”に奮起したいところだ。