瞬間移動か、幽体離脱か――。沖縄・名護で行われていた日本ハムの一軍キャンプで、とある“珍現象”が話題となっていた。それは小笠原道大ヘッドコーチ兼打撃コーチ(46)が常識では考えられない超スピードで、球場内のいたるところに出没し、選手たちが仰天していたという。舞台裏を追跡すると、球界ではほとんど例を見ない“球団公認ドッペルゲンガー”の存在が明らかになった。

 それはキャンプ中、本紙記者がグラウンドで遅くまで汗を流す選手たちをチェックしていた時のことだ。「グラウンドで指導しているはずのガッツさんが、なぜか球場の受付にもいたんですよ…。見に行ったほうがいいですよ!」。ある選手が、まるで小笠原ヘッドのドッペルゲンガー(分身)が存在していたかのような仰天体験を報告しに来てくれた。

 眼前には、精力的に若手選手へ指導する小笠原ヘッド。「そんなことあるものか」と半信半疑で球場正面の受付へ向かうと、そこには確かに背番号「81」のユニホームを背負った男がいた。そばにいた球団関係者も「ほら、小笠原さんだよ」とこの男を紹介する。若手野手は「え? あれ? 小笠原さん…?」と頭をパンクさせていた。

 よくよく見ると、小笠原ヘッドよりもやや小柄。醸し出すオーラにも、特別な威圧感はない。ただ、ドッペルゲンガーだとしたら、本人がこの男を見ると、小笠原ヘッドは死んでしまうのだろうか…。恐る恐る直撃すると「小笠原ミニ大と申します。小笠原さんのものまね芸人をやらせてもらっています」と穏やかな表情で自己紹介。正体は、浅井企画所属のものまね芸人・小笠原ミニ大(35)だった。

 野球ものまね芸人は数いれど、球場内で普通に存在している芸人はほとんど前例がなく、これでは選手が間違えてしまうのも仕方ない。球場内に普通に出入りできるのも、今季から二軍本拠地・鎌ケ谷スタジアムでの試合を盛り上げるMCに就任。いわば球団公認の芸人だからだという。

 ミニ大によると、小笠原ヘッドが中日時代に本人公認を取得。今では小笠原ヘッドが創設し、GMも務める身体障害者野球チーム「市川ドリームスター」のGM補佐として練習の手伝いを行うなど、厚い信頼も得ており「今着ているユニホームは、小笠原さんから『いつも手伝ってくれてありがとう』といただいたものなんです。感謝したいのはこちらの方なのに、自分にはもったいない言葉です…」という。

 そこへ練習を終えた本人も登場し「中途半端なものまねはするなよ! (完成度は)まだまだだよ! どこが足りない? 全部だって!」と、さらなる進化を要求した。

 キャンプ終盤にはすっかりチームにとけ込み、たくさんの選手・関係者からものまね披露や記念撮影を頼まれ、球場に和やかな雰囲気をもたらしたミニ大。怪情報の真相は、2人のガッツがナインのために奮闘していた姿だった。