【大下剛史 キャンプ点検・ヤクルト編】最下位からの逆襲なるか――。今季から一軍で指揮を執るヤクルト・高津臣吾新監督(51)を本紙専属評論家・大下剛史氏が直撃した。ともに広島県出身で、34年に及ぶ縁がある郷土の大先輩が繰り出す辛口トークに、現在は二軍調整中のドラフト1位・奥川恭伸投手(18=星稜)の一軍デビュー時期から主砲・バレンティン(現ソフトバンク)の抜けた穴、11日に他界した恩師・野村克也氏からの“遺言”やチーム再建への覚悟まで、新指揮官が包み隠さず打ち明けた。

 大下:太ったな。監督になった途端に。

 高津監督:いやいや。監督になって太ったんじゃなくて、ここ2~3年で太ったんです。シーズンに入ったらヤセるんで、今のうちに太っておくんですよ。

 大下:ワレの野球人生は高校のときからずっと見てきたが、絶対に弱音を吐かん男よのお。

 高津監督:でも、勝てるか分からんです。

 大下:本気で言うとるんか?

 高津監督:去年、あれだけ負けたんですよ(借金23で5位中日と9ゲーム差の最下位)。簡単には変わらないです。特に投手は…。

 大下:勝てそうな投手はおらんのか?

 高津監督:40歳の石川と、小川しかおらんです。外国人(イノーア=前オリオールズ)や大学生(吉田大喜=日体大)は獲りましたけど。順位予想は5位ぐらいにしといてください。バレンティンもいなくなったし。

 大下:バレンティンはおらん方がいい。

 高津監督:そこは何とかなりそうなんですよ。30発は打てないけど、戦力アップになると思っています。

 大下:守る野球をせなあかん。守る野球なら計算が立つけのう。打つのはアテにならん。

 高津監督:点を取るより、点を取られない野球をやらないと。

 大下:お前も考え方は一緒やろ? 派手さはないけどな。

 高津監督:そりゃあ打つに越したことはないですけど、一にも二にも投手です。

 大下:ところで奥川はどうなんや?

 高津監督:僕は(二軍から)送られてくる動画でしか見ていないけど、抜群っすね。(球団の)育成の方針とかもありますけど、使いたくなります。勝てますよ。

 大下:右ヒジの炎症は、どうなんや?

 高津監督:22日からブルペンにも入ったので、普通にいけば1か月後には試合で投げられると思います。ファームで先発もして夏前に(一軍で)出てくれたら。あれは絶対に勝てます。体のバランスから投げる球まで…他にいないです。すごいいい。あとはケガをしないでやるだけ。足も速いし、守備もできる。

 大下:じゃあ一軍デビューが早くなるかもしれんな。

 高津監督:僕としてはファームで投げさせるなら、一軍に置いて(登板間隔を)10日間空けるなり、球数を見て、こっちで練習させながら育成したい。

 大下:だったらフロントにそう言えばええじゃないか。

 高津監督:それは言います。僕がくじを引いたんで(笑い)。

 大下:一軍と二軍ではまったく雰囲気が違うから、そういう選手は一軍に置いておかないとダメよ。

 高津監督:特別扱いじゃないけど、そういう目で見てあげないといけないんで、しっかり育成したろうと思っています。

 大下:この世界は特別扱いせな。みんなが平等なんてあり得ない。自信を持ってやればいい。

 高津監督:奥川は絶対にエースにしなきゃいけない選手。村上を4番にして、奥川をエースにして、2人をそれこそ日本を代表する選手にしなきゃいけない。

 大下:やりがいがあるじゃないか。それで負けてもいいじゃないか。

 高津監督:勝っても負けても全然いいし、投げられて、ここ(一軍)で経験させたら、それでいいと思うんです。もちろん「優勝を狙います」とは言いますけど、今は育成して、何年後かに強くするのが絶対にいい。

 大下:ワレの性格ならできる。

 高津監督:38歳の青木が中心選手ですからね。別に体力と技術があれば年齢を重ねていてもいいんですけど、チームとしては違う人が出てこないと…。

 大下:そうしないとチームが活性化せんし、お客さんも喜ばない。この世界は若い選手を育てないけん。どっちにしたってシーズンで50回は負けるんじゃけ。

 高津監督:80回は負けますよ。勝利宣言じゃなくて負ける宣言になっちゃいますけど(笑い)。

 大下:それじゃあ60回しか勝てんやないか。バカか!

 高津監督:ガハハ。逆になったらいいですね。50敗できると思って頑張ります。

 大下:みんな期待しとらんのじゃけ、楽なもんよ。

 高津監督:それは野村監督にも言われたんですよ。「最下位のチームを預かるなんて、めちゃくちゃ楽しいぞ。上がるしかないんだから。これより下はないんだから気楽にやれ」と。

 大下:その通りよ。ワレは強運の持ち主なんじゃけ、思い切ってやったらいい。

 高津監督:人生の転機とか分岐点っていろいろあるじゃないですか。僕ね、全部間違ってなかったと今、思えるんですよ。大下さんの広商や広陵ではなく県工(県立広島工業)に行ったのも良かったし、亜細亜大に行ったのも。しんどかったけど間違いじゃなかった。今回も絶対にいいことがあるんじゃないかと思っています。