【新鬼の手帳・伊原春樹】日本ハムのキャンプ地・名護の新球場は思いのほか素晴らしく、選手たちも生き生きと汗を流していた。笑顔で出迎えてくれたのが「ガッツ」こと小笠原道大ヘッド兼打撃コーチ(46)。まずは「日が傾くまで猛練習させているそうだね」と軽くジャブをかますと「当たり前でしょう伊原さん。打てないんだから、練習するしかありませんよ」とサラリと返してきた。

 ガッツとの会話の中ではキーマンとなる2人の名前が挙がった。1人目は王柏融。来日1年目の昨季は88試合で打率2割5分5厘、本塁打も3本と苦しんだが、今年は「このままいけば、やってくれそう」との感触を持っているという。ガッツも二人三脚で「スイングが小さくなっているんじゃないか」などの助言をしたとのこと。期待したくなるね。

 もう一人は巨人から移籍してきたビヤヌエバ。周囲に聞けば、巨人では「打たなければ外される」とのあせりを生み、打撃を崩してしまったことがあったという。そこで私が「ガッツ、今年はずっと使ってくれるんだろ?」と持ちかけると「もちろんですよ」。

 ただ、ビヤヌエバに関しても黙って見守っているわけではないところがさすがだ。「ちょっと引っ張りにかかりすぎているきらいがあるんです。だから彼には『センター返しでいいんだぞ』と言い続けています」という。若手に猛練習を課す一方で、主力に対してもポイントを指摘しながらしっかり信頼関係を築いている印象を受けた。

 ガッツが野手に目を光らせている分、栗山監督は課題の投手陣整備に集中できているようだ。エース格の上沢の出遅れもあり先発の駒不足を嘆いていたが「ルーキーの2人は楽しみですよ」と、ドラフト1位の河野(JFE西日本)、同2位の立野(東海理化)に大きな期待を寄せていた。新人を計算に入れるのは苦しいが、日本ハムの上位進出には若い投手の活躍が絶対条件になる。

 地元・北海道でも2023年開業を目指して今年から新球場建設が本格的に始まる。「完成したら、ぜひいらしてください」と話していたのはどういう意味だろう? 栗山監督の内に秘めた闘志にも注目したい。

(本紙専属評論家)