【前田幸長 直球勝負】今季はまさに正念場と言えるだろう。プロ8年目を迎える阪神・藤浪晋太郎投手(25)だ。沖縄・宜野座春季キャンプで取り組むテーマは言うまでもなく制球難の克服。長きにわたって悩まされ続けている“持病”を完全払拭しようと背番号19はもがく。

 第1クールの4日から早々とシート打撃に登板。5人の打者に投げたが、2本の長打を浴びた。それでもすっぽ抜ける球はなく、力のこもった投球内容を見せたことに多くの在阪メディアが復活への期待感を寄せた。果たして復調の気配を漂わせる姿は本物なのか。矢野燿大監督(51)に悩める藤浪の現状について本音を聞いた。

「絶賛したとか、ダメ出ししたとか…。あんまり俺がいろいろ言い過ぎると良くないしな」

 まずこう言ってクギを刺しつつも、4日の登板に関する“正当評価”は「引っかけとか抜け球っていうのはなかったからな。でもあくまでも及第点」。どうやら周囲が騒ぎ立てるほど指揮官は胸を躍らせているわけではなく、極めてドライに捉えているようである。

 非常に興味深かったのは矢野監督によると、藤浪の調子具合は「表情で分かる」という点だ。ここ数年、マウンド上では“ダメ顔”と“良い顔”の区別がベンチから見ていてハッキリつくぐらいに「どうしても表情にすぐ表れる」らしい。この見極めはさすがに我々では難しいが、現役時代に名捕手として数々の投手とバッテリーを組んだ経験値の高い矢野監督だからこそ成し得る妙技なのだろう。だから「それがとりあえず4日は出ていなかったというところは第一歩じゃないか」とも補足していた。

 しかし「藤浪は計算に入れていますか?」と聞いてみると「いや」と即答した。そりゃあ、そうだ。この程度でゴーサインを出し、本人が慢心してしまうようでは困る。矢野監督は悩める藤浪に驚きの“超復活”を課している。