ロッテ・朗希 幻となった野村さんとの対談

2020年02月14日 16時30分

剛速球を披露した佐々木朗に、200人超が大興奮

 ロッテのドラフト1位ルーキー・佐々木朗希投手(18=大船渡)が大絶賛の嵐に戸惑っている。石垣島キャンプ最終日の13日にはプロ入り後初めてブルペンに入り、立ち投げで25球を投げ込んだ。ついに解禁された剛速球とあって周囲は大騒ぎだが、なぜか本人は浮かない表情。そんな悩める怪物に「ノムさんが生きていてくれたら」との声が上がっている。

 満を持しての登場だ。アップを終えた佐々木朗がブルペンに向かうと、集まった約50人の報道陣、200人超のファンが大移動。首脳陣を含む大勢の人間が固唾をのんで見守る中、すさまじいミット音が次々と静寂を切り裂いた。

 捕手のすぐ真後ろで剛速球を見守った井口監督は「立ち投げではありましたけどかなり威力のある球で、想像以上に仕上がりがいい。まだまだ調整段階だとは思いますが、今年ブルペンで見た中ですでにナンバーワンかなと思います」と最上級の評価。続けて「ダルビッシュや大谷とは(現役時代に)対戦していますが、その2人とも全く違うタイプ。スピン量が違います」と話すなど、黄金ルーキーに惜しみない賛辞を贈った。

 これまで佐々木朗の育成を一手に引き受けてきた吉井投手コーチも「すごかったです。驚いて細かいところが見れなかった。あんな球を投げるやつは見たことがない。誰っぽいかというと佐々木っぽいとしか言いようがないが、これまでに見たことがない球という意味では野茂を思い出した」と絶賛。球を受けた柿沼も「今まで受けてきた誰とも違う。速さも球の強さも、キレも伸びもしなやかさもある。体感で155キロくらいに感じた。ミットが切れそうになりました」と驚きを隠せなかった。

 待望の初ブルペンで首脳陣の度肝を抜き、いよいよ評価は青天井だが、周囲の興奮をよそになぜか本人は浮かない表情。この日のブルペンについて「感触は良くなかった。全体的に悪かったです。勢いとかタイミングも違う。久しぶりに投げて心地いい感覚? なかったです」と不満げに話し、納得のいくボールについても「なかったです。(ブルペンで投げた)5分間は長かった」と言い切った。

 あまりに顕著な周囲と自己評価のギャップについて、佐々木朗をよく知る関係者は「冷静に客観的に自分を見ている半面、周りがあまりに持ち上げることへの戸惑いもあるでしょう。ちょっと立ち投げしただけで大谷だ野茂だと騒がれたら、そんなに甘いわけがないと周囲の評価にかたくなになってもおかしくない」と危惧する。

 そんな状況下、11日に亡くなったばかりの野村克也さんを惜しむ声も上がっている。チームスタッフは「いいことしか言わない他の大御所と違って、野村さんは金の卵にも忖度なし。今の朗希にも言うべきことにはダメ出しを惜しまない。それがいずれは朗希のためにもなるはずだった」と残念がる。

 実は今回のキャンプ中、テレビ局の評論家として野村さんも石垣島を訪れることが予定されていたが、車イスでの移動と体調面を考慮し直前で断念。オープン戦明けにも千葉で佐々木朗と対談する運びとなっていた、その矢先の訃報だった。

「野村さん自身、朗希くんに会うのをとても楽しみにしていました」と関係者。愛ある“ダメ出し”を直接受ける機会はもうないが、その活躍を天国まで届かせることはできるか。