【ノムさん追悼】ソフトバンク・王球団会長 時に激しく野球観をぶつけ合い語り合った

2020年02月12日 16時30分

ソフトバンクの王監督(右)と話す楽天監督時代の野村さん。指揮官としても火花を散らせた

 ソフトバンク・王貞治球団会長(79)にとっても野村さんの訃報はショックだった。しかし、思い出を語りながらどこか楽しそうだったのは、野村さんが「同じ時代を悪戦苦闘して戦い抜いた戦友」だからだろう。

 捕手としてあの手この手で抑えにきた。左斜め後ろから飛んでくる“ささやき戦術”の標的にされた。「なんかブツブツ言ってたね~」。気品高い79歳の珍しく砕けた口調が、故人との親密さをうかがわせた。

「僕がホームランを打つようになってから野村さんの家にお邪魔したりして、いろいろごちそうになったり、野球の話をしたりした。大阪にも飲みに行ったりもしたよ」。ユニホームを脱げば、日本野球の発展をけん引した同志。時に激しく野球観をぶつけ合い、語り合った数少ない仲だった。

 本塁打、打点といった主要部門の歴代通算記録は「王のすぐ下」が野村さんの定位置だった。生前、そのことをぼやき続けた。「野村さんがつくった記録のところを僕が追いついていった時は、ノムさんがすごい抵抗して頑張ってねえ…ある程度並走していったから。ノムさん、意地を見せたなって思ったよ。まあ、(若くて)勢いの方は僕の方が上だったからね。これはノムさん認めていたと思うんだ。本人も抜かれたら仕方ないと思ってたんじゃないかな」。自らの優位性を誇張することなど、普段はまずない、謙虚な男の極めて珍しい述懐シーンだった。

 自身も2006年に胃がんを患った。死生観に影響を与え、毎春「(キャンプインの)2月1日に胸がときめく」喜びを感じている。だからこそ同志の無念を思う。「やっぱり長生きして一日でも野球界を見ていたいからさ。野球界の変化を。特に今年はオリンピックの年だからね。その年に野球界がどんな戦いをするのかというのをね、ノムさんも見ていたかったと思うんだよね」

 王会長は今、東京五輪というビッグイベント後の“尻すぼみ”を懸念している。球界発展に尽力できる生き字引の急逝を惜しみながら、先導役の使命感を新たにした。