新天地でもスタイルは変わらない。今年から鷹の一員となったウラディミール・バレンティン外野手(35)が淡々と爪を研いでいる。初来日から9年間を過ごしたヤクルトを去り、新たなステージに挑む最強助っ人が未知のパ・リーグと、あのレジェンドについて語った。

 第2クール初日のこの日、バレンティンはランチ特打に参加した。最初は軽く打っていたが、終盤に差し掛かると力を入れ始め、計112スイングで3連発を含む柵越え20本。最後のスイングでアーチをかけると、雄たけびを上げた。

 来日から9年間で288本塁打。あと12本で節目の300本塁打に到達する。現在の状態は「日に日に動きは良くなっている」とニヤリ。キャンプインから6日が経過し「今のところいい感じ。(ソフトバンクは)もともと知っている選手も多いからね」と話した。

 昨年8月に国内FA権の取得条件を満たし、今年から「日本人扱い」となった。節目の10年目で初のパ・リーグは「自分にとって新しい挑戦」。投手のレベルはセ・リーグより高いとされるが、バレンティンは何も気にしていない。

「セ・リーグもパ・リーグも日本の野球には違いがない。日本の投手も日本の投手であることには変わりはないし、自分にとっては同じ。いかに自分がそこに適応していけるか、それだけ」。昨年は背中に痛みを抱えながらのプレーだったが「今年は痛くない」と頼もしい。

 日々、刺激を受けているという。王貞治球団会長(79)の存在はバレンティンにとっても「彼はレジェンドで、とてもすばらしい打者」であり、毎日のようにグラウンドにいることにも驚いている。

「王会長と同じチームで同じグラウンドにいて、普通にコミュニケーションを取れるのは自分にとってすごく名誉なことに感じる。カタコトの英語で『ハロー』とか『どうしてる?』『元気?』とか聞いてくれて、気持ちをシェアできるっていうのは、めちゃくちゃ光栄なことだよ」

 2013年には王会長が持っていたシーズン最多本塁打記録を抜く60本塁打を放ち、プロ野球新記録を樹立したが「勝つことが一番」という意識は変わらない。「毎年のことだけど、個人としては30~40本塁打は打ちたい。そうすればチームの勝利にも貢献できると思う」。その準備は着々と整いつつある。