【前田幸長・直球勝負】就任2年目を迎える中日・与田剛監督(54)の妥協なき姿勢は健在だった。沖縄・北谷キャンプで選手たちに熱い視線を向ける表情には、現役時とたがわぬ強い闘争心が表れていた。

 与田監督は自分にとってもドラゴンズに在籍していた現役当時の大先輩だ。故星野仙一さんの“闘将流操縦術”も間近で接してお互いによく知っているだけに、若手育成に関しても厳しい理念を持っている人なのは言うまでもない。

 それが如実に表れたのは、期待の大きい根尾昂について聞いてみた時の反応だ。与田監督は「彼がスターだったのは甲子園だけであって、今は何もないでしょう」と言い切った。

 もちろん「潜在能力はずばぬけている」と“無限の伸びしろ”があることは認めている。だが「まずはしっかり結果を出し続けないと」という考えがあるからこそ、ある程度目をつぶって試合に出し続けるような起用をするつもりは一切ない。

 将来のスター候補と目されているが、昨季ルーキーイヤーの一軍昇格は終盤での2試合のみ。多くのメディアや一部の中日OBから「なぜ根尾を一軍に呼ばないのか」「遊撃手として一軍の場で経験を積ませるべき」などと与田監督がバッシングを浴びてしまうこともあった。それでも当の指揮官は私に「俺は根尾に関しては正解だったと思っている」と断言し、こうも続けた。

「(正遊撃手の)京田の守備率は高い。彼の守備でチーム防御率(数字)が下がっているのも感じる。だから結果を見て批判を受けることは全然割り切っているよ」

 あくまでも根尾は遊撃手として勝負したい意向を持っていると聞く。それならば京田の存在を脅かす存在になってみろ――。それが与田監督の“愛のムチ”だ。

(本紙評論家)