Gのエースが「カネやん魂」を伝承する。今季の目標をチームの日本一と「20勝」と定めた巨人・菅野智之投手(30)が若手の“教育”にも力を入れていく。その一つが昨年10月に86歳で死去した400勝左腕・金田正一さんの教えだ。今や球界を代表する投手となった菅野が世紀の大投手から学び、次世代に伝えたいこととは――。

 宮崎キャンプ2日目、菅野はブルペンで32球を投じた。腰痛からの完全復活を期すため、調整は慎重。マウンドから座った捕手に変化球を投げるのは自主トレを含めて2度目だが、左足を上げる前に体をひねって両腕を右肩付近に構えてから投げ始める新フォームへの移行は着実だ。

 さっそく効果も表れたようで、特にカーブはキレが増した。「基本的にはカウント球、遊び球だったりで使ってましたけど、十分勝負できるボールだなと感じてます」と収穫も口にした。原辰徳監督(61)も「なんとなくリニューアルした感じはあるよね。気分良く調整してくれれば。リーダーですからね」と全幅の信頼を置いている。

 そんな菅野が「ちょっとでも近づけたら」と語っているのが、新人時代から何かと気にかけてくれたという金田さんだ。食事をともにするたびに「プロ野球選手とは」「エースとは」といった“帝王学”を学んできた。

 もちろん、惜しまず伝え継ぐ。「金田さんが話してくれたものは数えきれないですけど、僕がためになった話や、いい話を聞けたなと思うものがあれば、今のルーキーの子とかに伝えていけたらなと思ってます」と“語り部”となるつもりだ。

 例えば、食へのこだわり。「『朝、市場に行って食材買ってこい』みたいな」と切り出し、菅野はこう続けた。「金田さんは現役中、朝早く起きて食材を自分で買ってきて、奥さんに渡して『これで今日、何か作ってくれ』ってしていたみたいなんです。その話も会うたびにしてくれました。『食べるものでしか栄養はつけられないから』と。自分で管理してやるのは当たり前だってずっとおっしゃってたんで、それは印象に残ってます」。実際、菅野も食によるコンディショニングの重要性を実感しており、食生活をグルテンフリーに切り替えるなど体調管理に努めている。

 さらに金田さんのもう一つの原点でもある「走れ、走れ」についてはこう語った。「最近はね、いろいろトレーニングだったり、数値化されることがすごく多くなってきてますけど、そういう昔の人の教えっていうのは、やっぱり残していかないといけない部分もあると思います」

 絶対エースの復活は東京五輪での悲願の金メダルにも直結する。カネやん魂伝承者・菅野の2020年が始まった。