いつの間にか消えた松井監督と巨人の築地新球場プロジェクト

2020年01月28日 16時30分

巨人のユニホームを着た松井氏(左)の姿は再び見られるのか

【赤坂英一 赤ペン!!】先日、巨人のスタッフ会議を取材に行ったら、山口オーナーが「今年は何としても日本一を取りたい」と強調していた。2013年以降7年連続で日本一を逃しており、これは球団史上最長タイ記録。今年、不名誉な新記録をつくらないためにも、「(日本シリーズで)ソフトバンクに勝たなければならない」のだ。

 では、ソフトバンクと巨人との差は何だろう。よく選手の育成力、スカウト力の差などが指摘されるが、自前の本拠地球場を所有しているか、いないかが大きいのではないかと思う。ソフトバンクは12年、ヤフードームを約870億円で不動産投資会社から買収した。これで約50億円もの年間使用料がなくなり、物販や広告料などの収益もすべて球団に入るようになった。

 この莫大な収入がどれほど育成や補強に役立っているかは論を待たない。例えば、オフにFA選手の争奪戦が起こると、ソフトバンクは巨人の3倍の条件を提示しているそうだ。

 一方、巨人の本拠地を所有している株式会社東京ドームは、資本関係のない別会社。年間使用料は30億円とも言われ、球場の広告や営業収入も基本的に全部ドームのものだ。加えて、室内球場の耐用年数が30年と言われる中、今年で32年に達しており、ますます老朽化が目立つ。

 もうこのままにしてはおけないと、数年前には巨人の球団内部でも「自前の新球場を持つべき」との声が上がり、各部署を横断するプロジェクトチームがつくられたと聞いた。当時は東京五輪後、旧築地市場跡地に天然芝の新球場を建設するという、大変夢のある話も浮上した。

 その後、葛西や代々木にできるという情報も飛び交ったが、いつの間にか立ち消え状態。それとともに、松井秀喜氏を巨人の監督として復帰させる話も、最近はさっぱり聞かれなくなった。今年はキャンプで臨時コーチを務める予定もなさそうで、巨人との距離は遠のくばかりだ。

 阪神の甲子園球場は関連会社で、広島、DeNA、楽天も様々な営業努力で球場での収入を増やしている。そうした中、球界の盟主を任じる巨人が、創立以来自前の球場を所有したことがない、という事実自体が寂しい。近い将来、新球場で松井監督を見たいと願うファンは少なくないはずだが。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。毎週金曜朝8時、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ!」出演中。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」(講談社)などノンフィクション増補改訂版が電子書籍で発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」(PHP文庫)など。最新刊は構成を務めた達川光男氏の著書「広島力」(講談社)。日本文藝家協会会員。