【楊枝秀基のワッショイ!!スポーツ見聞録】言葉の中に覚悟が秘められている。阪神の守護神とは、大相撲の横綱に似たり…。その言葉の主はあと7セーブで名球会入りを果たす阪神・藤川球児投手(39)だ。

 虎史上最長期間、守護神の座に君臨した投手としての矜恃だろう。以前、藤川を直撃すると歯切れのいい言葉が返ってきた。

「阪神のクローザーは相撲で言えば横綱みたいなもの。抑えて、勝って当たり前。打たれたら、負けたら新聞の1面です。全責任は自分。打たれ続けたら、負け続けたら引退ですよ」

 どの球団であれ27個目のアウトをつかむ守護神には重圧がかかる。好投手でもつまずけば、簡単には立ち直れない。まして絶大な人気を誇る阪神となると、普通の心臓では持つはずもない。

「阪神だけ、いや巨人もそうかな。変な投球はできない。負けたら完全に戦犯です。ここを任される存在となれば、もう逃げ場はない」

 藤川は特に2010年に引退した元横綱・朝青龍に感銘を受けていた。同い年であり、同じ高知県の高校出身(朝青龍=明徳義塾、藤川=高知商)。ここ一番で集中力を高め、一気にスパークさせる相撲スタイルに「プロとして見たら素晴らしいものがあった。影響を受けた選手は多いと思う」とコメントしていた。

 想像するのは05年以来、15年ぶりのリーグVのかかったマウンド。シーズン最終戦、勝てば優勝負ければV逸の究極の決戦だ。巨人を相手に1点リード。ここで実力を出せる選手はホンモノしかいない。

「僕の仕事はみんなが作ってきた試合を、1点でも勝った状態で終わらせること」。締めの1アウトを圧巻の横綱投球で。そんな瞬間を藤川は待っている。

 ☆ようじ・ひでき 1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。