大きな励みとなる心配りの電撃視察だったのは間違いない。昨年末のこと。ソフトバンク・工藤公康監督(56)が右股関節の手術から復帰を目指しているデニス・サファテ投手(38)のもとを訪れていた。2018年4月の一軍登板を最後に長いリハビリ生活となっている右腕にとってうれしいサプライズ。名球会まで残り16セーブの最強守護神が復活を目指す。

 工藤監督はオフを利用して米国へ自己研さんの旅に出ることが恒例となっている。今回も多忙の合間をぬってV旅行先のハワイから本土へ移動。メジャー球団の関係者らに会って意見交換を行った。「収穫はいっぱいあった」と笑顔を浮かべる。

 ただ、今回それだけではない。指揮官が向かった先の一つが、アリゾナに住み同地のジムでトレーニングを行っているサファテのもとだった。球団フロントは「サファテも『いいサプライズだった』と喜んでましたよ。『調子はどうだい?』と監督が訪ねて来てくれたわけですからね」とニッコリ。積極的な行動に首脳陣からも「なかなかできることではない。頭が下がる」との声が出た。

 心配りのこもった訪問といえる。サファテといえば17年に史上最多の54セーブを挙げてMVP、さらには正力松太郎賞にも輝いた最強守護神だ。しかし、右股関節を痛めて18年4月を最後に登板なし。現在は名球会の規定となる250セーブまで残り16セーブのところで止まっている。昨季から新たに3年契約を結んでいるがリハビリに明け暮れている。

 責任感の強いナイスガイ助っ人として知られる右腕だけに現状に申し訳なさを感じて苦しんでもいる。昨年は開幕一軍を目指して2月のキャンプから来たものの、状態が上がらずに6月に帰国となった。その間もチームは激戦の中で3年連続となる日本一を達成した。懸命なリハビリに取り組みつつ「みんな自分のことなんて忘れてるだろう」と口にすることもあったとか。

 それだけに指揮官が気にかけてくれているという事実が何よりもうれしかっただろう。いくらアリゾナにいたとしても、指揮官が母国でトレーニングに励む助っ人のもとを視察、激励に訪れることなど異例だ。リハビリに関しては「とにかく焦らないこと」が工藤監督の持論。股関節ならなおさらだが、その上で復帰に向けた大きな刺激となったのも間違いない。

 12月上旬に投球練習を再開している最強守護神・サファテ。多くのファンが再びマウンドに立つ日を心待ちにしている。