五輪イヤーに心配な球界展望 確実に広がるメジャーの門戸で来オフに主力大量流出しないか

2020年01月07日 11時00分

ポスティングでレイズ入団が決まった筒香(ロイター=USA TODAY Sports)

【球界こぼれ話・広瀬真徳】いよいよ2020年が幕を開けた。今年の日本球界最大のイベントといえば東京五輪だろうが、気になるのは「その後」のこと。各球団の主力級選手が来オフ、ポスティング制度を利用してメジャーに渡る可能性が高いからである。

 日本ハムの有原、西川は共に今オフの契約交渉で球団側にポスティングによる米移籍を直訴した。DeNA・山崎、ロッテ・石川も今季の成績次第で来オフ渡米を視野に入れる。ここに以前からメジャー志向の強い巨人・菅野やソフトバンク・千賀も加わろうとしている。

 そもそも当初のポスティングシステムは日本の球団が選手を米球団に譲渡する見返りに、多額の譲渡金を受け取れる制度だった。だが、その内容は年々改定され、18年からは選手が得る契約金と年俸に対して譲渡金が変動するシステムに変更。いつの間にか送り出す日本側の“うまみ”がなくなってしまった。

 実際、先日レイズと契約合意に至った筒香の場合、DeNAが受け取る譲渡金はわずか2億6000万円ほど。06年に松坂大輔がレッドソックスに移籍した際、所属していた西武に支払われた譲渡金が当時のレートで約60億円だったことを考えると違いは歴然だ。

 にもかかわらず、昨今の日本球団は「海外FA権を行使して出ていかれるよりはマシ」と、主力選手が希望を出せばポスティングによる移籍を後押しする傾向にある。今や、かたくなに制度利用を認めないのは潤沢な資金で選手を引き留めることができるソフトバンクだけ。そのフロント陣ですら軟化の姿勢を見せ始めているのだから、主力選手の海外流出は避けられそうにない。

 メジャー側もこうした日本球界の動きを察知している。ある駐日スカウトも先日、こう話していた。

「メジャーでは今、年20億円稼いでも年俸ランキングで上位20位内に入れないほど年俸が高騰している。そのあおりを受け、年俸数億円程度で獲得できる日本人選手に魅力を感じているのです。特にポスティングは所属球団への譲渡金負担が減ったことや比較的若い選手を獲得できることもあり、各球団とも前向き。今オフ『好条件での移籍は厳しい』と噂されていた筒香や山口(巨人→ブルージェイズ)の移籍先が予想以上に早く決まったのもそんな事情があったからこそ。2人の活躍次第では来オフ、さらにポスティングによる日本人選手の獲得競争が激しくなるでしょうね」

 広島・菊池涼のように米移籍を志願しても思うような条件提示を得られず断念するケースもあるだろうが、米球界における日本人選手への門戸はここ数年、確実に広がっている。となれば、東京五輪後の日本球界は「主力選手の大量流出」と「空洞化」に見舞われないか。

 明るい雰囲気が漂う五輪イヤーとはいえ、球界の先行きを考えると一抹の不安を抱かざるを得ない。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。