【伊勢孝夫・新IDアナライザー】2005年以来リーグ優勝から遠ざかっている阪神は、来季の覇権奪回へ向け、今オフに5人の新外国人選手の補強を敢行。現有戦力も含めた新陣容での戦いに期待も高まるが、長丁場のシーズンを戦い抜く上で注目されるのはやはり、就任2年目となる矢野監督の戦力運用だ。本紙評論家の伊勢孝夫氏は大胆なコンバート案も提示しつつ“猛虎復活プラン”をブチ上げた――。

  ここ10年で阪神の“自前当たり助っ人野手”といえばマートン、ゴメス程度しか思い浮かばないが、今回新たに加入した、ジャスティン・ボーア内野手(31=前エンゼルス)は、ある程度の数字を残してくれると思っている。左のプルヒッターということで、甲子園の浜風にどの程度対応できるかが鍵になるが、4番を任せるなら彼だと思っている。

 一方、韓国球界で今季打点王のタイトルを獲得したジェリー・サンズ(32=キウム)には過度な期待をしない方がいいだろう。韓国球界の打者は日本球界と比べて内角球への対応力に劣る傾向があるため、私は懐疑的だ。

 慢性的な貧打に悩まされてきた阪神だけに、来日1年目から一定の数字を残してくれたマルテもスタメンで使いたいところ。一塁にボーアを置き、三塁にマルテ。そうなると、今季開幕から長らく4番の座を任された大山があぶれてしまう格好になるが、私は大山の左翼へのコンバートも「あり」だと思っている。

 現状で阪神の外野のレギュラー候補は近本、福留、糸井、高山。メンツは揃っているのだが、全員が左打者という点でバランスが悪い。この位置に若い右の長距離砲・大山が入れば、打線の左右のバランスも一気に良化する。今の時期からしっかりと左翼守備の練習をしておけば、バレンティンよりは守れるようになるはずだ。試すだけの価値は十分にあると思っている。勝負強さに定評のある福留を、代打の切り札としてベンチに温存することも可能になる。

 投手陣ではやはり、藤浪の復活こそが最重要課題だろう。彼が復活を果たし、2桁勝利を挙げてくれれば阪神は優勝できる。そのためには、何はともあれ一軍のマウンドで投げることこそが最良の“リハビリ”になると思う。投球内容の良しあしにかかわらず、5回を投げたら必ず降板させる形をとり、勝ち星をつけてあげたい。自信を取り戻し、精神面も安定すれば課題の制球難も克服できるはずだ。(本紙評論家)