巨人・阿部慎之助二軍監督(40)が若手育成の一大方針を激白した。来季、自ら指揮を執るイースタン・リーグでは“優勝放棄”を堂々宣言。一試合ごとの勝利には全力を尽くすが、起用するのは実績のない若手を厳選する。一方で、ある程度の一軍経験を持つ「一軍半」の選手だけでなく、実績のあるベテラン勢も事実上の“三軍追放”。断固たる決意で強固な育成組織をつくり上げる。

 阿部二軍監督は19日に東京都内で行われた「2019 ヤナセ・プロ野球MVP賞」の授賞式と「タニタ健康大賞」贈賞式に出席。イベント後には報道陣に応対し、二軍内の意思疎通や風通しを良くする目的で「ミーティングといって上から物を言うだけじゃなくてディスカッション。酒を飲みながらでもいい。後輩がタメ口で、先輩が敬語とか」と“飲みニケーション”を導入するプランなどを披露した。

 次から次へと新たなアイデアを生み出すが、二軍をどういう場にしようとしているのか…。阿部二軍監督は本紙に明確なビジョンを示した。

「優勝を目指してはやらない。(二軍で)そこばかりを求めてもしょうがない」

 巨人は2018年までイースタン・リーグ4連覇。当時の球団内でも「二軍の本分は一軍に戦力を送り込むこと。二軍の優勝に何の意味があるのか」と疑問の声もあったが、阿部二軍監督の答えは明快だった。もちろん、日々の試合では「二軍も勝つことは大事。勝ちグセをつけながら個のレベルを上げてほしい」と最善を尽くす。ただ、優勝を念頭に置いた采配や用兵はしないつもりだ。

 すでに20代後半で一、二軍を行き来している中堅選手には「来年、二軍の試合で使う予定はない。チャンスは少ない」と通達しているが、阿部二軍監督のメスはベテラン勢にも及ぶ。例えば、不調でファーム降格となった実績組の扱いはどうするつもりなのか?

「同じ。チャンスは少ないよ。一軍に行きたければ、数少ないチャンスで結果を残してくれと。試合に出たいなら『三軍に行ってくれ』って言うよ。それぐらい徹底しないと(若手は)育たないから」

 いわゆる「一軍半」や実績ある選手を二軍戦で起用すれば、同時に経験を積むべき若手の出場機会が失われる。

「(重要なのは)個人のレベルアップ。ダメでもいいから、若いヤツを我慢して使ってね。失敗したり、良かったりをたくさん積ませないと。トントン拍子にうまくなるなんてことは絶対にないんだから。そのへん(一軍半やベテラン)を試合で使ったら、たぶん勝てると思う。二軍だと活躍できるから。でも、それで勝ちに行ってもしょうがないでしょ?」

 阿部二軍監督が見据えるのは来季だけではなく、数年後の巨人を支える若手を一人でも多く育てることだ。だからこそ「一軍半」や不調のベテランを限りなく排除し、若手に出場機会を与える。すでに「俺は嫌われても構わない」と腹はくくっている阿部二軍監督。二軍を完全な若手育成の場とするべく心を鬼にする。