主将の「圧」が加速中だ。キャプテンとして念願の初優勝を果たした巨人・坂本勇人内野手(31)の言動が、今までにない変化を見せている。今オフはアッと驚く主将退任を申し入れただけでなく、ふとした発言でも後輩たちへのプレッシャーを強化。ジワリジワリと次世代リーダーの誕生を促している。

 主将就任5年目で初のリーグ制覇を成し遂げた坂本勇は、久しぶりのハワイへの優勝旅行でゴルフを満喫するなどすっかり充電中。31歳の誕生日を迎えた14日(日本時間15日)には現地で祝福を受け、笑顔が絶えない一日となった。

 円熟味を増してきたキャプテンは、今オフになって特に若手への重圧を強めている。シーズン終了後には球団に主将退任を申し出る波乱も起こしたが、実は4万人超のファンが詰めかけた舞台でも間接的に後輩たちに向けたメッセージを送っていた。11月下旬に東京ドームで行われた恒例のファンフェスタでのこと。国際大会「プレミア12」を振り返るトークコーナーで「熱男」ことソフトバンク・松田宣の名前を挙げ「マッチが盛り上げてくれて。(巨人にも)いつもああいう人が一年間、一緒にいてくれたらいいなあと思いました。(ベンチ裏でも)ずっとあのテンション」と、さりげなく語っていた。

 この“マッチ欲しい発言”の意図は何なのか? ベテランのチームスタッフは「そういうところで他球団の選手の名前を出されるところに、ウチの選手は危機感を持たなきゃいけない。裏を返せば『チームリーダーになるような選手がウチには誰もいない』ってことだからね」と代弁した。

 単にお祭り男がベンチに欲しいというだけではない。ムードメーカーも必要だが、背番号6が求めるのは「もっとチームのことを大きく考える人が増えてほしい」というものだ。昨オフには長野や内海らベテランがFAの人的補償で移籍し、今オフは大黒柱だった阿部が現役引退。世代交代の波は容赦なく押し寄せている。

 坂本勇にも“後ろ盾”となり得る存在はもういない。次期主将候補に小林や岡本を挙げたのも、自分がいなくなったら誰が巨人を支えるのか?という問いかけとも言える。その思いはヤングGたちにも届いているようで、若手の一人は「僕らが物足りないということだと思います。簡単ではないですけど、少しでも勇人さんに追いつけるようにしないと」と背筋を伸ばしていた。

 自らが発した一言一句を考えさせるかのような坂本勇の“ジワジワ作戦”。今後もどんなメッセージを発信するのか見逃せない。