14年ぶり西武・松坂「アンチ」との戦い 「家族を守るために」反論の場はマウンドだけ

2019年12月12日 16時30分

久しぶりに西武のユニホームに袖を通した松坂。左は渡辺GM

 14年ぶりに「西武の松坂」が帰ってきた。前中日の松坂大輔投手(39)が11日に都内ホテルで西武と正式契約。「家に帰ってきた感覚」「野球が好きだという気持ちを表現するだけの場を与えてくれたライオンズに感謝している」と帰るべき場所に戻れた喜びを表現した。一方では「期待されていない方のほうが多いと思う。それを少しでも覆せるようにやっていきたい」とも…。この発言の裏にはどんな思いがあったのか。

 高卒入団後の3年間で3年連続最多勝の計45勝27敗。在籍8年間で6度の14勝以上を含む計108勝(60敗)を挙げた西武のレジェンドが、17年の辻監督、18年の松井稼二軍監督らに続いて、ついに帰還した。

 松坂は「すぐに声をかけていただいたのがライオンズだったので何も迷うことはなかった」「やっぱりライオンズに戻ってこられるというのは、何というんですかね。家に帰ってきた感覚」「あまり大きなことは言えないですけどリーグ3連覇、そして惜しいところで届いていない日本一のために少しでも力になれるようにやっていきたい」と古巣復帰の喜びと、野球人生の集大成として再起にかける思いを語った。

 その一方で、テレビカメラ15台、100人を超える報道陣が集結した会見の状況に「正直、僕としては記者会見を開くのも申し訳ないと思って、ここに出てきました」と恐縮。「今年(中日で)何もやっていないので…。期待されていない方が多いと思いますが、それを少しでも覆せるようにやっていきたいと思います」「周りは無理だという人が多いと思いますが、自分自身が諦めることはしたくない。諦めず200(勝)という数字を目指してやっていきたい」と、常に批判の材料探しに目を光らせる“アンチ勢力”を刺激しないよう慎重に言葉を選びながら、等身大の抱負を語ってもいた。

 実は前回の西武在籍当時から、今も変わらぬ松坂の思いが「将来的な指導者願望は一切ない」ということ。それを知る渡辺久信GM(54)、潮崎哲也編成ディレクター(51)が今回の獲得オファーに至る過程で、指導者含みの条件を付けずに選手としてのオファーのみを出したのも、本人の意思を最大限尊重したためだ。

 では、なぜ年下の選手からの人望も厚い松坂に、指導者願望が皆無なのか? 松坂に近い関係者はこう明かす。

「それは家族、特に子供たちのことを心配しているから。今の松坂は何をやっても、言っても、応援してくれる一定数のファンと同程度かそれ以上の批判を受けてしまう。独身のころならまだしも、中には一部の心ない報道や誤解された情報を基に書き込まれるネットの情報を見て(3人の)子供たちが傷ついてもいる。反論するタイプでもなく、自身のSNSも持たない松坂は、ただその状況に耐えているだけ。それは見ている人間がつらくなるほど。必然的に現役を終えたら、家族を守るために野球の現場を離れて報道の対象から外れたいと願うのも仕方ないと思う」

 例えば現在はユーチューバーとしての顔も持つカブスのダルビッシュのような反論手段をあえて持たない松坂が唯一、無言の反論をできる場所が今はマウンドの上だけ。選手としてボロボロになるまで完全燃焼したいと願う松坂の“もう一つの戦い”の現場には、スーパースターといわれる選手だけが抱える暗い影もある。

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