原巨人が助っ人補強の心臓部にメスを入れている。球団は今季まで中日で国際渉外担当を務めていたデニー友利氏(52)の招聘を目指す一方で、1日付で春川正明編成本部次長兼国際部長(58)を退任とする人事を発動した。わずか7か月での“スピード更迭”は春川氏の言動が問題視された点も多いが、就任時からやゆされ続けた汚名も返上できないまま球団を去ることになった。

 8年ぶりの日本一奪回へ、球団内の基盤固めが着々と進められている。新たに白羽の矢を立てたのは、今季限りで中日を退団したデニー氏だ。北米から中南米を中心に太いパイプを持ち、中日ではビシエドやR・マルティネス、ロドリゲスらの獲得に尽力したデニー氏の手腕を高く評価。交渉がまとまれば海外ルートの拡充につながる大きな補強となりそうだ。

 また、今季の巨人は5年ぶりのリーグ優勝こそ果たした一方で、助っ人たちには誤算が相次いだ。原監督も以前に「今年はほとんど機能しなかった。そこは『改めること、はばかることなかれ』」と改善の必要性を強調。すでにビヤヌエバらは来季構想から外れ、退団を申し入れた形のマシソンも含めて7人もの外国人選手がチームを去る見込みだ。

 国際部の重要ミッションの一つは外国人選手が日本野球や環境に適応し、どれだけ実力を発揮できるかを見極めること。その陣頭指揮を執る立場にあった春川氏は、1日付で退任が決定した。同氏は読売テレビを退職し、5月1日付で国際部長に就任。日本テレビ系列の「情報ライブ ミヤネ屋」でコメンテーターとして活動していただけに当時は異例の抜てきと話題を呼んだ。

 しかし、結果的には7か月で解任。就任後は外野ノック中の球拾いに参加する積極姿勢を示したまでは良かったが、選手と接触。現場首脳陣から「ケガしたらどうするんだ。もうグラウンドに入れるな!」と“出禁指令”が飛んだこともあった。極め付きは、リーグ優勝後のビールかけに飛び入り参加してしまったこと。背広組は参加しないのが慣例で「ビールかけの件で(球団側も)いよいよかばえなくなったと聞いています」(球団関係者)という。

 そもそも、春川氏が着任した経緯を巡っても球団内には“疑念”が付きまとっていた。同氏は石井球団会長が親会社の読売新聞社で1999年から約3年間、ロサンゼルス支局長を務めた時期に、自身の肩書も日本テレビのロサンゼルス支局長だった。当の春川氏は「関係ない」とキッパリと否定したが、周囲からは「野球好きなのは分かるが、フロントとして何も実績がないのに、いきなり国際部長になれたのは何かしらの縁故があったのではないか?」と色眼鏡で見られていた。

 こうした雑音をかき消すには国際部長として結果で示すしかなかったのだが、汚名をそそげないまま同氏は読売テレビに帰任する見通しだ。

 球団は米大リーグ・ナショナルズからFAとなったヘラルド・パーラ外野手(32)を獲得。さらなる新助っ人を調査しつつ、体制づくりも強化していく。