【NPBアワーズ】華やかな舞台に今年の球界を沸かせたヒーローたちが一堂に会した。26日に行われたNPBアワーズではタイトル獲得に納得の笑顔もあれば、さらなる飛躍を誓う姿もあった。そんな中、奪三振王と育成出身投手初のベストナインに輝いたソフトバンク・千賀滉大(26)は壇上で来季のタイトル独占を宣言。「意識して狙っていた」という奪三振王のタイトル獲得の裏には、どんな思いがあったのか。

 りりしい表情で表彰式に臨んだ千賀は「ここ(壇上)に先発投手が今(自分も含めオリックス・山岡、オリックス・山本、日本ハム・有原の)4人いますが、来年は1人でいられるように頑張ります」と来季のタイトル独占を誓った。

「例年(奪三振王は)則本(楽天)さんがいるポジションなので、そこは意識して頑張りました」。最多奪三振に強いこだわりを持って臨んだシーズンは、両リーグでダントツの227奪三振。使命感を持って取り組んできた「オレンジリボン運動」に貢献できた喜びも大きかった。

 今季から千賀は試合用グラブに「オレンジリボンマーク」の刺しゅうを入れた。子供虐待をなくすことを呼びかける市民運動に共鳴。1奪三振につき1万円をNPO法人「児童虐待防止全国ネットワーク」に寄付することを決めた。「寄付よりも、一人でも多くの人にオレンジリボン運動のことを知ってほしい。数字を残して取り上げられることでさらに発信できる」ことが目的だった。

 虐待が起こる背景やその根源をどうすれば絶てるのか。普段から考えている。

「人それぞれの生い立ちや家庭環境によるところが大きいので非常に難しい問題。だけど、凄惨な事件が多すぎる。自分の子供に接するからこそ、そのたびに毎日、思いや考えを巡らせる。どうして虐待が減らないのか。僕にできることは限られているけど、社会全体でもっと深く問題意識を持ってもらいたい。ライフワークじゃないけど、そのために活動していけたらいいなと考えています」

 自身も2児の父。痛ましい事件が全国で報じられ、糾弾されても減らない現状に「どうして届かないのか、響かないのか。厳罰化するとか、法律を変える必要があるのかもしれない…」と実行力のある虐待抑止策の必要性を訴える。「社会全体で問題意識を高めて、みんなで見守ることも大切」ともいう。

 凄惨な事件に触れ感情的に発言しているわけではない。本来あるべき親子の姿が一つでも多くの家庭で取り戻されることを願い、発信力のあるプロ野球選手としての使命感を持って活動の輪を広げている。

 心優しき鷹のヒーローは、グラウンドの外でもフル回転を誓った。