米球界で「日本人野手の評価暴落」は本当か?

2019年11月19日 11時00分

メジャー入りを目指す秋山(中央)。左は山崎康晃

【広瀬真徳 球界こぼれ話】来季メジャー入りを目指す日本人選手の動向が注目されている。

 海外FA権を行使した秋山翔吾(西武)に加え、ポスティングでの移籍を狙う筒香嘉智(DeNA)と菊池涼介(広島)。いずれも日本球界を代表する選手だけに期待が高まる。 

 だが、ここ数年の日本人選手の米移籍は投手中心。野手は二刀流の大谷翔平(エンゼルス)を除くと、2013年にマイナー契約でジャイアンツに入団した田中賢介(元日本ハム)までさかのぼる。しかも、メジャーで大成したのはイチローや松井秀喜らごくわずか。こうした事情から米球界では日本人野手の評価が暴落していると言われるが本当なのだろうか。

 17日まで開催されていた「プレミア12」で米代表と共に来日していたア・リーグ関係者に話を聞くと意外な返答があった。

「日本人野手の評価が低いわけではない。私のチームでも調査はしている。ただ、以前に比べ獲得に消極的なのは金銭面が大きい。過去には『マイナーでもいい』という日本人野手がいたが、現在は最初から複数年契約に加え、現年俸以上を提示しなければMLBに挑戦しない。それに出場が限られる投手と違い、野手はシーズンを通しての活躍が要求される。動くボールへの対応や連戦が続く環境への適応も必要になるため、メジャー経験のない日本人野手との巨額契約にはリスクが伴う。こうした状況が日本人野手のメジャー入りを阻害してきたのでしょう」

 では、好条件さえ望まなければ今でも日本人野手の移籍は可能なのか。

 MLBは近年、チーム格差が問題になりつつある。今季もシーズン100勝以上を挙げたチームが4球団あった半面、60勝未満も4チームあった。特にア・リーグ中地区のタイガースは47勝(114敗)で勝率は3割にも満たない2割9分2厘。同地区首位のツインズには実に53・5ゲームという大差をつけられた。野球の世界最高峰リーグとはいえ、全球団が同レベルとは言い難い。この戦力差も日本人野手の移籍先に影響を及ぼすという。

「ヤンキースやレッドソックスなどは潤沢な資金で有力選手を集めるため、よほどの実力がない限り獲得には動かない。一方、弱小球団もチーム再建に向け若手育成に力を注ぐので獲得は見送る。そうなると日本人野手を必要とするのはリーグで上位争いをする中堅球団となる。実際に日本人野手でチーム強化を狙いたい球団は存在する。FAでもポスティングでも獲得に手を挙げる球団はあるはずです」(前出関係者)

 条件はあるものの、メジャーには日本人野手が活躍できる土壌は残る。あとは選手個人の米球界への思い次第か。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。