巨人・原辰徳監督(61)が“放任主義”で指導者育成にあたっている。第3次政権に入り2度目となる宮崎での秋季キャンプでのテーマは、ヤングGのレベルアップだけではない。コーチ陣に練習内容を“丸投げ”することで、指導者として総合的な経験を積ませる方針をとっている。過渡期にあるチームの立て直しに、全権監督が本腰を入れた格好だ。

 6日からスタートした秋季キャンプは第1クールを終了。11日は最初の休養日となった。昨年の今ごろはナインの顔と名前を覚える作業からスタートした原監督も、直接指導も織り交ぜながらヤングGの動きに目を光らせているが、今年は刷新したコーチ陣にも目を配っている。

 今季は空位だったヘッドコーチに元木前内野守備兼打撃コーチを抜てき。さらに縦割りの壁を取り除くべく、打撃コーチを撤廃し「野手総合コーチ」のポジションを新設した。全コーチが役割を超え自由に意見交換できる空気をつくり、その「実践の場」として秋季キャンプに充てた。

 投手、野手ともに日々の練習メニューについて質問が及んでも、原監督は決まって「知らない。ヘッドに聞いて」と、全セクションを把握する元木ヘッドへ“丸投げ”。「全部(コーチ陣に)任せているから。何かあったら言うよ、とだけ言っている。今のところひと言も注文つけていないけどね」とも語り、ほぼ放任していることを明かした。

 来季に向け自覚と責任を促す原監督の“無言の圧力”に、コーチ陣はしっかりと応えている。元木ヘッドが陣頭指揮を執った実戦形式の「シム・ゲーム(シミュレーション・ゲーム)」では、状況に応じたサインプレーの確認だけでなく、ミスした選手に「罰走」を取り入れるなど、より緊迫感を与えた。

 ヤクルトの打撃コーチから新たに加わった石井野手総合コーチは、バリエーションに富んだ打撃練習だけでなく、これまでになかった走塁意識を叩き込んでおり、原監督も「まったく自分を疑うことない指導をしているし、そこに『強さ』を感じる。これからもっと味が出るでしょう」と目を細めている。

 投手部門では投手総合から「投手チーフコーチ」となった宮本コーチが、吉村作戦コーチとともに投手の打撃練習に時間を割き「投手の打率を1割5分にする」(今季は9分6厘)と意気込んでいる。もちろん指揮官も歓迎だ。

“縦割り撤廃”は来春のキャンプにも導入する見込みで原監督は「今年は一、二、三軍ともに宮崎からスタートしようということになっている」と宮崎、沖縄と分かれていたキャンプを1か所に集結させた。全権監督のチーム改革は着々と進んでいる。