早くもエンジン全開だ。6日にスタートした巨人の秋季宮崎キャンプで、熱血指導しているのが、新任の石井琢朗野手総合コーチ(49)。広島のリーグ3連覇の礎を築き、ヤクルトでも手腕を発揮した同コーチはキャンプ初日、6時間ほぼぶっ通しでGナインを叩き上げた。すでに指導力には定評がある一方で、巨人では“特殊ミッション”の遂行も求められている。

 キャンプ初日、午前9時30分から全体練習が始まり、打撃練習は実に3時間以上に及んだ。石井コーチは3組に分かれて次々と回ってくる15人の選手たちに休憩なしでティーを上げ続け、時には打撃ケージで疲れを見せた選手に「休むところじゃないぞ!」とゲキも飛ばした。ランチ休憩後の個別練習では打撃投手も務め、ある意味で選手以上に無休で動き回った。

 一口にティー上げといってもメニューは多彩だ。高いものは選手の頭上、低いものは地面スレスレ、さらにはソフトボールを導入したりとバリエーションは豊富。スタミナを誇る主砲・岡本ですら「めちゃくちゃキツい。エグいっす…」と倒れ込んだほどだ。それでも全メニューを消化すると最後は「今までしたことがないような練習でしたし、身になる練習だなと思います」と目を輝かせた。

 当の石井コーチは「打撃はタイミングとスイング軌道でほぼ決まる。試合で大事になるのは対応力。バットの入れ方を日頃からやっておかないと。高いトスでもヘッドを立ててバットを上から出すということ」と意図を説明しつつも「まあでも(練習が終わるのは)早いよ」と疲れも見せずサラリだった。

 同コーチが「来ているのがほぼ二軍の選手」としたように、秋季キャンプのメインテーマは個々のレベルアップ。その腕前に期待がかかるが、原監督が見そめて外部招聘した理由は他にもある。同コーチにとっては古巣となる広島の“徹底解剖”だ。

 チームスタッフは「カープが3連覇するまでに成長できたのは石井コーチの力あってこそ。カープがここまで強くなれた秘訣を知っているし、同時に外から見たウチの弱さ、もろさも知り尽くしている。カープを倒すカギを握っているのは確かでしょう」と前のめりだ。

 リーグ優勝こそ成し遂げた今季も広島には辛酸をなめさせられた。昨オフにはFAで丸を獲得して大きく戦力をそいだが、それでも結果は10勝14敗1分け。5年連続で負け越した原因はどこにあって、どこをどう強化すれば倒せるのか…。そのすべてのヒントは石井コーチの頭脳に詰まっているというわけだ。

 2020年に向けてスタートを切った原巨人。今度こその「打倒・広島」を達成する最大のキーマンは石井コーチなのかもしれない。