今の巨人こそ「ロッテより弱い」

2019年10月30日 11時00分

1989年の日本シリーズ第7戦では加藤哲(手前)が駒田に本塁打を浴びた

【赤坂英一 赤ペン!!】いまの巨人には3連敗から4連勝できるほどの力はない。日本シリーズを取材して痛感した。

 ソフトバンクに3連敗した直後、ネットや一部マスコミで「加藤哲郎みたいなヤツがいれば」という声が上がった。1989年のシリーズで巨人が3連敗すると、近鉄・加藤哲が「巨人はロッテより弱い」と発言(実際の内容は異なる)。巨人が発奮し、翌日の第4戦から4連勝したからだ。私は89年に全戦を取材し、巨人の激怒ぶりを目の当たりにした。とくにカンカンだったのが近藤ヘッドコーチで「加藤は己を知らなさ過ぎるよ! シーズン10勝してない投手が何言ってんだ! 分をわきまえろ!」と絶叫。「そんなこと言って次も負けたらどうするんですか」と聞いたら、「そうだな、すみませんって頭を下げて家に帰るよ!」。近藤ヘッドは悔しさを剥き出し、笑いも取って、チームの士気を盛り上げていた。今年の巨人にはああいう人材がいない。実際、第4戦の前に関係者をつかまえて雰囲気を尋ねても、威勢のいい声は返ってこなかった。

 89年に巨人が4連勝できたのは、近鉄首脳陣の内紛も一因である。第4戦の先発には、第1戦勝利投手のエース阿波野を中3日で登板させよう、と権藤投手コーチが提案。が、奇策好きの仰木監督は、プロ初勝利を挙げたばかりの池上でいくと主張した。両者が激しい口論になり、先発が小野に決まったのは第4戦当日の朝。近鉄4連敗は、首脳陣の衝突による自滅でもあったのだ。

 しかし、翌90年のシリーズでは巨人は西武に初戦から1勝もできずに4連敗。3連敗した直後「去年のシリーズを再現したいよね」と私が水を向けた某選手は、「そうしたいけど、去年と今年じゃ相手が違うよ」と力なく漏らしたものだ。巨人が29年ぶりに0勝4敗に終わった今年、私も29年前と同じような取材をしていたわけである。4連敗したあとには、岡崎が苦渋の表情で「野球観が変わった」とコメント。巨人は翌91年もダメージとトラウマを引きずり優勝争いもできず4位に終わった。今年の巨人は、あの90年の巨人に似ている。

 ちなみに、今年ソフトバンクがシーズンで8勝17敗と唯一負け越したのがロッテ。いまの巨人は「ロッテより弱い」と言われても仕方がない。“加藤哲発言”は、30年の時を経て現実になったということだろうか。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。毎週金曜朝8時、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ!」出演中。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」(講談社)などノンフィクション増補改訂版が電子書籍で発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」(PHP文庫)など。最新刊は構成を務めた達川光男氏の著書「広島力」(講談社)。日本文藝家協会会員。