巨人・原辰徳監督(61)が提言した「セ・リーグDH(指名打者)制導入論」がチーム内で大きな波紋を広げている。レギュラーポジションが1つ増えることになる野手はもちろんのこと、意外にも対戦相手が厳しくなる投手からも歓迎する声が噴出した。またDH制を実現するためメジャーの“外圧”を期待する声まで上がっている。

 6年ぶりに出場した日本シリーズでソフトバンクに0勝4敗と完敗を喫した翌24日、東京・大手町の読売新聞東京本社にオーナー報告のため訪れた原監督は「セ・リーグはDH制というのがないからね。しかし、DH制は使うべきだろう。DH制というのが(ソフトバンクと)相当差をつけられている感じがあるね」とセのDH制導入を提言した。

 指揮官にとってはかねての持論。しかし公に表明したことでその波紋はチーム内に広がっている。出場のチャンスが広がる野手からは当然ながら「一年でも早く導入してほしい」と歓迎の声が上がった。また不利になるとみられる投手陣からも前向きな声が…。中堅投手の一人は「投手からすれば対戦相手のレベルは上がるけど、代打による投手交代がなくなって中継ぎが準備をしやすくなる。何より打席に立つことや塁に出ることによるケガのリスクがなくなる」とメリットを挙げた。

 ただDH制の導入は長年にわたって議題に上がりながら見送られてきた現実もある。セが予告先発を2012年に取り入れた際、議論に上がったが「DH制は野球の根幹にかかわる問題。予告先発とは事情が違う」と某セ球団幹部から猛烈な反対があった。野球本来の姿である「9人制」へのこだわりが強いセ球団は多い。

 そんな“保守派”の存在を念頭に巨人フロントの一人は「日本では(リクエスト制度やコリジョンルール、申告敬遠など)メジャーで採用されたルールが数年遅れて採用される。(DH制のない)ナショナル・リーグがDH制を導入すればセでもすんなり導入できるのでは」という。実際、ナ・リーグのDH制導入にはMLB選手会も積極的で、今年1月のオーナー会議後、マンフレッド・コミッショナーは「(導入は)早くて2022年以降」と見通しを語っている。

 こうした議論が内外で沸き起こることが、実は指揮官の狙いでもある。原監督は「五輪、WBC、あるいは、少年野球でいうならば、教育的な(部分で)、レギュラーが9人から10人になる。やっぱりレギュラーは増えた方が、ファンだって、あるいは少年たちだって、いいと思うしね」とアマチュア球界を含めた議論の広がりを期待している。

 指揮官の提言に端を発した議論は今後ますます活性化しそうだ。