【楊枝秀基のワッショイ!!スポーツ見聞録】阪神が巨人とのCSファイナルステージに敗戦し、1週間が経過した。甲子園球場では休日を経て秋季練習がスタート。日本シリーズも終わり、秋風を感じる季節となった。そんな折、ふとシーズン序盤の4月上旬のことを思い出した。矢野阪神がスタートを切った開幕直後、4月6日の広島戦(マツダ)で藤川球児が救援登板。自身2度目の1イニング2被弾を喫するなど、3失点で降板という結果が残った。翌7日には登録抹消。この時点で登板3試合、防御率9.00となり、ベテラン右腕としてはスポーツ各紙に格好のネタを提供してしまった形となった。

 抹消から2週間が経過し4月23日にはウエスタン・ソフトバンク戦(鳴尾浜)で、3年ぶりの二軍戦登板。2番手で登板し最速149キロの直球を投じるなど、1回1安打無失点の投球後、取材するとこんな言葉が返ってきた。

「どうしたんよ、改まって。鳴尾浜まで取材に来るなんて珍しいですよね。ご心配なく、大丈夫です。シーズンが終わるときトータルの成績で僕を判断してください。調子悪いとかまったくないんで。シーズンは長いですから。リリーフのみんながしんどい時、しっかり仕事するために準備してますから」

 この言葉は本当だった。わずか4日後の4月27日に一軍復帰すると、3か月後の7月終盤から守護神に返り咲き。そのままシーズンを56試合4勝1敗16セーブ、防御率1.77と結果を残した。

 日米通算243セーブとし、名球会まで7セーブに迫った。同い年でいわゆる松坂世代の元同僚・久保康友投手(今季はメキシカンリーグでプレー)は「何かと話題になる松坂世代にあって、名球会の可能性があるのは球児くらいですよね」と言われるポジションにいる。秋季練習の現場に藤川や能見、福留といったベテランは当然いない。練習、調整は任せていれば大丈夫。首脳陣もそう判断するからだろう。これら虎のレジェンドが在籍する期間中に、もう一度リーグ優勝を成し遂げることができるのか。すでに来季が楽しみでならない。

☆ようじ・ひでき 1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。