令和初の日本シリーズは23日、東京ドームで第4戦を行い、ソフトバンクが4―3で勝って日本一を決めた。セ・リーグ王者の巨人は1勝もできずに屈辱の4連敗。今後は来季に向けた動きが本格化することになるが、2年目を迎える原政権はコーチ人事にも着手。最大の目玉は、この日で19年間の現役生活に幕を下ろした阿部慎之助捕手(40)の二軍監督就任だ。原監督の後継者として阿部が第2の野球人生を歩みだす。

 7年ぶりの頂点には届かなかった。4戦全敗の結果に、試合後の原監督は「ソフトバンクの勢いをなかなか止めることができなかった。かなり高い壁はある。宿題、課題を残した状態で来季につなげるというところでしょうね」と話した。

 終戦とともに、来季に向けた体制づくりを本格化する。補強面ではFA資格を持つロッテ・鈴木大地内野手(30)の獲得調査に乗り出す。今季は吉川尚の故障離脱もあり、長年の課題である二塁手を固定できなかった。鈴木は二塁をはじめ内野を万能にこなせるユーティリティープレーヤーで140試合に出場した今季の打率も2割8分8厘、15本塁打、68打点と攻守で戦力アップが見込める。

 また、外国人選手では今季で中日との契約が切れるジョエリー・ロドリゲス投手(27)らを調査。リリーフ陣の再構築は急務で今季64登板で防御率1・64、リーグ最多の41ホールドと抜群の安定感を誇る。最速159キロのセットアッパーにはメジャー球団も熱視線を送るが、巨人も左腕の動向を注視していく。

 今季果たせなかった日本一奪回へ首脳陣も刷新する。一軍コーチには広島3連覇の礎を築き、今季までヤクルトで打撃コーチを務めた石井琢朗氏(49)を招聘。リーグ制覇したこともあり、宮本投手総合コーチや元木内野守備兼打撃コーチら多くは留任する見込みだ。

 そして、組閣の最大の注目は終戦とともに選手生命を終えた阿部だ。結論からすると、阿部は指導者人生を二軍監督からスタートさせる。原監督は以前、来季の阿部の一軍ヘッドコーチ就任の可能性を否定していなかったが、関係者によるとまずファームで修業を積むのは阿部本人の意向だという。

 その二軍には元チームメートで今季、日本ハムで引退→退団した実松一成氏(38)が入閣する。阿部は「(監督になったら)サネを呼ぶ」と語ったほど信頼は厚い。全権を握る原監督の主導とはいえ、阿部の意向も反映された人事と言える。

 もちろん、コーチ陣の人数にも限りはある。誰かを入閣させれば、誰かを退団させる必要に迫られる。これまでの選手側から立場は変わり、クビを切る痛みも伴う。今回、阿部の意向を反映させたことでクビを切られたコーチが出たことは、未来の監督候補である阿部に対する「原監督なりの教育なのではないか」(球団関係者)との見立てもある。

 また、今季から再々登板した原監督は2015年に退任。バトンを受けた高橋由伸前監督は満足に監督修業する猶予もなく、大役を引き受けた。指揮を執った昨季までの3年間はV逸。球団内には「今度こそ、しっかりとした後継者を育てることが原監督の義務」とする声もある。原監督は3年契約。その間にヘッドコーチなどのステップを踏ませつつ帝王学を伝授することができれば、早ければ22年シーズンに「阿部巨人」誕生となる。

 二軍監督として“全権教育”を受け、いずれは伝統球団を率いる監督候補筆頭の阿部。この日は代打から途中出場し、現役最後の打席を二ゴロで終えた。背番号10は「あれが僕の今の力。短期決戦に勝つ難しさを痛感した。来年以降、日本一奪回してもらえるように応援したい」と静かにバットを置いた。戦力としての役割は終えたが、生え抜きのスター監督誕生へ厳しい道が始まる。