鷹・工藤監督“神采配”と評された用兵の根拠になったものとは

2019年10月14日 14時43分

日本シリーズ出場を決めて会見する工藤監督

 リーグ2位からの2年連続下克上日本一を狙うソフトバンクは13日、西武とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第4戦(メットライフドーム)に9―3で快勝し、パ史上初となる4連勝突破で3年連続19度目の日本シリーズ出場を決めた。ファーストステージで出番を失った主力が次々に“蘇生”し、ベンチ要員も勝負どころで力を発揮。工藤公康監督(56)のアメとムチを使い分けた選手起用が冴え渡った。

 松田宣が最後のアウトとなる飛球をグラブに収めると、工藤監督は穏やかな表情でコーチ陣と握手を交わした。パ覇者を4連勝で退けるスイープ。球界の盟主・巨人が待つ日本シリーズに駒を進めたナインを「ここぞの集中力と勝負強さを発揮してくれた。選手には『よくやってくれた。ご苦労さん!』と声をかけてやりたい」とねぎらった。

 ファイナルステージで繰り出した用兵が次々に的中して突破の流れをつくった。不振のためファーストステージで先発から外した松田宣を、初戦でいきなり5番起用すると4打点。同戦の8回にはCS男の内川に代打・長谷川勇を送り同点劇を演出した。第2戦以降はファーストステージから出番が激減していた中村晃を5番に抜てきすると、2試合連続決勝打の活躍だった。球団内では「紙一重の采配。裏の結果が出ていれば終わっていた。それを繰り出す勇気があって、さらに結果がついてくる。強運というか、なんというか…」と采配の核心に迫る者は少なかった。

“神采配”と称賛された選手起用に、指揮官は対戦投手との「相性重視」を強調したが、そんな単純な話ではない。人知を超えたように映った采配は、指揮官にとっては必然だったのかもしれない。

 実働29年、224勝を誇った左腕の利き手に今年、最も握られていたものはタブレット端末のiPadだ。中には他球団を含めた最新の試合動画や、選手の細かなデータなどが網羅されたアプリが入っている。2011年から球団主導で導入されたもので、これに追加する形で今季開幕前、指揮官は自身のiPadに打撃や投球フォームの動作解析をしやすいツールなどの導入を球団に要望した。

 試合へ向かうバスの中や自宅で、毎日iPadとにらめっこ。「自分のところの選手と相手の選手、投手も野手も全部見てるよ」。羅列された数字やデータだけでは分からない選手の特徴や相性の「根拠」を、自ら導入を希望したツールを駆使したり、動画を繰り返し見返すことで論理づけていった。

 おのずと睡眠時間は削られた。「8月くらいからは4時間とかかな。去年までは7時間くらいは取れていたんだけどね。今年はケガ人が多くて、通しで出せない選手もいた。メンバーを決めるのが大変で…。考えだすと寝られなくてね。出す選手を決めるまではいっても、打順を話し合う時間が足りなかったりもした」

 睡眠を削っての“予習”も、続出する故障者問題を解決できず、2年連続のV逸に悔しさを募らせた。だが、CSに入り戦力が回復すると、寝る間を惜しんだ努力は結果に結びついた。

 選手として11度、監督として3度の日本一に輝いてきた「短期決戦の鬼」。研究熱心で磨きをかけたタクトは、巨人との日本シリーズでも冴え渡るはずだ。