セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第2戦が10日、東京ドームで行われ、1位の巨人が3位の阪神を6―0で下した。アドバンテージを含め3勝0敗とし、日本シリーズ進出に王手をかけた。絶好調のチームとは対照的にエース菅野智之投手(30)は今CSの登板回避を決断。日本シリーズでの復活を目指すことになった。

 先発メルセデスは散発3安打で7回無失点。4回にゲレーロがCS初安打となる2ランを放ち、5回には亀井、坂本勇が重盗を決めるなどベンチワークも冴えた。三塁すら踏ませぬ一方的な展開で圧倒しながら、試合後の原監督は「またフラットな形で戦う。今日と同じような精神状態で(第3戦の)プレーボールを迎えるというところですね」と引き締めることを忘れなかった。

 6年ぶりの日本シリーズ進出まであと1勝。そのチームから姿を消したのが菅野だった。腰痛からの復帰を目指し、8日から一軍に合流。11日の先発に備えて9日にはブルペンで投球練習も行った。しかし、この日から一転してファームで再調整となった。

 宮本投手総合コーチによると、登板回避の決め手は菅野本人の意思で、前日の練習後に申し出があったという。同コーチは「投げられないわけではない」とし「彼が自分のなかで自分の投球が勝利に貢献できる投球ではないという判断だった。不安、葛藤、責任感もある。総合的に彼が判断したところ」と説明した。

 菅野は今後の復帰目標を日本シリーズに切り替えたが、この方針に落胆の色を隠せなかったのがエース右腕の動向をチェックし続けるメジャー球団だった。ナ・リーグのあるスカウトは「お願いだから、今季はもう投げないでほしい…」とエースに異例の“懇願”。そこまで神経をとがらせるのは菅野に関して「(2014年8月の)右手中指のケガと、その年のCSでの右肘靱帯部分損傷はあったが、それ以降はケガによる登録抹消がなかったこと」を評価しているからだ。

 メジャーではレギュラーシーズンだけで年間162試合をこなし、長時間移動に加えて中4日での登板も求められる。成功するにはタフさがどうしても不可欠な要素だ。その点で、今季の菅野は「春先から腰をかばって手投げになっていた。本来の投球からは程遠い状態だった」(同)との見立て。ここで無理して腰痛を完治させられず、さらに悪化させるような事態に陥れば、将来的にも獲得に名乗りを上げづらくなるというわけだ。

 とはいえ今季11勝6敗で貯金を作りながら3度離脱したエースは「僕は何もしていない」と、並々ならぬ責任を背負い込んでいる。一度は公言した夢舞台であるメジャーから“復帰断念”を申し込まれてもプライドが許すはずもないだろう。復活登板へ全力を尽くす背番号18とメジャー側の思惑が海を挟んで微妙なすれ違いを見せている。