赤ヘル新指揮官が電撃残留コールだ。広島は7日、佐々岡真司投手コーチ(52)の来季監督就任を正式発表した。契約は単年。マツダスタジアム内で会見を開いた新監督は、カープ野球の継承と“ワンチーム”でのV奪回、日本一を誓った。監督としての初仕事は、今季国内FA権を取得した主力3選手の引き留めだ。球団任せにせず、すでに自ら慰留に乗り出していたことが判明した。

「来年も一緒に戦ってくれ――」。この日開かれた就任会見の前日、佐々岡新監督は3人の選手に電話をかけていた。相手は今季国内FA権を手にした会沢翼捕手(31)、菊池涼介内野手(29)、野村祐輔投手(30)だ。会見では「優勝するためにはこの3人は必要な選手。3人がいなくなるというのは今のところ僕の頭にはない。直接慰留? そういう機会があれば」としていたが、実は顔見せより早く、仕事に取り掛かっていた。

 明かしたのは練習のためマツダスタジアムを訪れていた会沢。新監督からの思いもよらぬ電話に、心が動いた。「力が必要だ、という話をしていただきました。うれしいですよ」と頬を緩めると、権利行使を決断する上での材料となり得るかとの問いには「それは全然あります」と応じた。

 決して球団から指示されての行動ではない。会沢の反応を伝え聞いた新監督は「バレたか」という苦笑いを浮かべると「僕の気持ちはこうだというのは伝えました」。照れくさそうに“直電”を認めたが、こうした細かな気配りができるところこそが、背番号88の最大の魅力と言える。

 就任会見でも誠実でおおらかな人柄が随所ににじみ出た。質疑応答を丁寧に重ねるなかで何度も口にしたのは、投手を中心に守り勝つ「カープ野球の継承」。そこに加えて「自分の色を出せていければ」とした。

 では、“佐々岡カラー”とはどんな色か。指揮官が掲げたのはW杯で快進撃中のラグビー日本代表の理念と同じ、“ワンチーム”で戦う姿勢だ。「野球というのは一人でできるもんじゃない。投手は野手に助けてもらうものだし、野手も投手のために、という気持ちで。みんなで一つの目標に向かって、勝った喜びを味わう、負けた悔しさを味わう。そういう一体感のあるベンチであってほしい。明るさもあり、厳しさもありというところでね」

 FA組の残留交渉はまだまだ難航を極めるだろう。崩壊したリリーフ陣の再建、打線の長打力強化など、取り組むべき課題は山積している。投手出身監督だけに、攻撃面のベンチワークにどう関わるのかも注目点。不安を挙げればキリがない。それでも「みんなに愛されるチームにしていきたい」と前を向いた新監督の言葉に、暖かな風が吹き込むのを感じた。