広島・緒方孝市監督(50)が1日、マツダスタジアムで会見を開き、今季限りでの退任を表明した。球団からは慰留されたが「自分の中では目一杯、全力でやりきった」という指揮官は要請を固辞。この日、松田元オーナーと会談して退任を了承された。球団はただちに後任探しに取り掛かるが、チームは過渡期。再建を託せる人物を探すのは容易ではない。

 終戦から一夜、指揮官が男のけじめをつけにマツダスタジアムへやってきた。正午から松田オーナーにシーズン終了を報告。身を引く意向を告げると、その後に記者会見を開いた。「今シーズン4連覇、悲願の日本一という目標の中で戦ってきましたが、目標を達成することなく、期待に応えることができず、監督としての責任なので申し訳ない気持ちでいっぱいです」。問わず語りで約3分間。胸の内に秘めていた思いを一気に吐き出すと深く一礼し、慣れ親しんだ仕事場を後にした。

 昨季まで球団史上初のリーグ3連覇を達成し、指揮5年目の今季も優勝候補と目された。しかし今季は序盤から主力の相次ぐ不振や、自身の暴力騒動、バティスタのドーピング発覚などのマイナス要因が重なり、求心力が低下。リズムに乗れないまま終盤戦に突入し、ラスト6試合も1勝5敗と失速。最後は6連勝の阪神に逆転を許して4位に終わった。

 ただ球団は一貫して緒方監督の手腕を買っていた。この日も鈴木球団本部長は「我々としては5年間で3度優勝したという事実があれば、別に1年で責任がどうのこうのとは全く思っていない。戦力から見ればよくやったと思う」と評価。9月初旬に水面下で退任の意向を示されてからも慰留に努めたが、指揮官の意思は固く、心身の疲労も口にしたために受け入れざるを得なかった。

 緒方監督は自身の今後について「ユニホームを脱いだ先のことは考えてない」としたが、球団には残らず、当面はプロ野球界から離れる意向を示しているという。会見では「(これからは)一OBとして選手たちと、カープを見守り、全力で応援していこうと思っています」と晴れやかな表情で語った。

 退任の意向は内々に聞いていた松田オーナーだが、本拠地最終戦のあいさつで来季の巻き返しを力強く誓ったことから、一時は続投の覚悟を固めたものと受け取ったという。緒方監督の行動に驚きと理解を示しつつ、後任探しについては「今日聞いたばかりだからね。これから考える」とした。

 次期監督像はオーナーの言葉通り、まだ混沌としている。鍵となるのは黄金期から過渡期に突入したチームをまとめ、立て直せる人物。鈴木本部長は「チーム的には3連覇というピークの中で人が抜けていくこともあるだろうけど、次の世代のことを考えながらチームをつくっていかないといけないし、かといってどん底に落ちるわけにもいかない」とし、従来通りOBを軸にリストアップを進めるとした。また松田オーナーは「人柄」を重要視するとし、「チームをまとめ、コミュニケーションを取れること」をポイントに挙げた。

 知名度が高い大物OBを多く抱える広島だが、球団側の条件に当てはまる人材はそういない。指導者経験も重要なポイントとみられることから、具体的には佐々岡投手コーチを筆頭に、現首脳陣の中からの内部昇格を軸にOBの中から選定を進めるものとみられるが…。球団は9日のチーム再始動をメドに新監督を決めたいとしている。