巨人は19日、ナゴヤドームでの中日戦に1―2の逆転負けで3連敗を喫した。優勝目前で金縛りにあったかのように打線が低調となり、3試合連続で1得点。最短Vは21日に持ち越しとなった。ただ、敗戦後も原辰徳監督(61)は泰然自若のまま。編成権も握る全権監督は前政権までとは異なる“原流ゆとり教育”で、若返ったチームの手綱を引いている。

 今季最後の中日戦は淡々と幕を閉じた。6回にスタメン復帰した坂本勇の37号ソロで先制するも、直後に同点に追いつかれ、8回に3番手の澤村が決勝点を献上。先発メルセデスの好投も相まって今季最短の2時間17分でゲームセットとなった。打線はわずか3安打。チャンスらしいチャンスもつくれぬ敗戦だったが、指揮官は「少々、硬くなっているところがあるかもしれませんね。それは難しいけどね」と目くじらを立てることなく振り返った。

 4年ぶりに再々登板した原監督は、年間を通じてある変化を見せている。前政権下では時に過激に行われてきた選手への“個人攻撃”が極端に減ったことだ。その代わり…ではないが、シーズン終盤になって目立ってきたのが、担当コーチへの“叱責”だ。

 ソトに3発を食らって大敗した11日のDeNA戦後は「バッテリーコーチに言っといて。少し気持ち悪いくらいに言っておいてよ」と相川同コーチを、9安打を放ちながら1点止まりだった前夜は「吉村(打撃)総合コーチに『よろしくお願いします』と言っといて」と首脳陣をやり玉に挙げた。

 なぜ、原監督は矛先を変えたのか。球団関係者は「今のチームはほとんどが若い選手で、監督との年齢は孫ほども離れている。厳しく言えば響くという時代でもない。今の時流に合わせているのでしょう。ましてや“全権監督”。特定の個人を非難しては選手が萎縮してしまいますよ」と明かした。

 また、チームスタッフによると「よほど目に余ることがあれば、それは選手にも言いますよ。ですが、今年は相当我慢しているようです。『のびのび野球』を掲げ、選手に関しての責任は自分が取ると決めていますし」という。

 この日も最後は「(選手たちに)何とかリラックスした状態で戦わせるというね。そういう環境を我々がつくる必要があるのかなと思いますね」とすべての責任をベンチで引き受けた。

 足踏み状態が続くが、Vは目前。20日からはマジック対象チームのDeNAと敵地2連戦。連勝すれば、文句なしで優勝が決まる。「そのことはそのことで。頭の隅に置いとけばいいことで、もっと大事なことがある」。歓喜の瞬間まで一戦必勝の「のびのび野球」で突き進む。