逆転CS進出に燃える阪神に激震だ。13日、二軍降格中のランディ・メッセンジャー投手(38)が今季限りで現役引退すると発表。同日午前、本人からの申し出を受け、球団が了承した。来日10年目で“日本人扱い”となった今季の長寿助っ人は自身5年連続6度目の開幕投手を務めたが、登板13試合で3勝7敗、防御率4・69と低迷。体力の限界を感じ、電撃引退を即決した格好だが、チーム内での反応はというと…。

 長年、虎の大黒柱だったメッセンジャーが球団の国際スカウトに自らの電撃引退を申し出たのはこの日の午前中だった。一報を伝え聞いた谷本球団本部長は東京での会合後、ナゴヤドーム内で緊急会見。「(本人が)思い通りにならないと…。あれだけ長年にわたって投げ続けてきた投手なので肩やヒジに疲労もあったのでしょう。何とかもう一度一軍のマウンドに立ちたいと米国に戻って治療もしたが、やはり昨日も結果が出なくて。潔くユニホームを脱ぎたいと申し出があったので、これまでの功労に感謝して(引退を)認めました」と明かした。

 メッセンジャーは12日の四国アイランドリーグ・徳島との練習試合(鳴尾浜)に先発し、5回4安打4失点と大荒れ。登板後は放送禁止用語を繰り返し、怒りに任せて投げつけたかみたばこが本紙カメラマンに直撃する一幕もあった。この乱調で今季中の一軍登板が絶望的となり、あと2勝に迫っていた日本通算100勝の今季中の達成も厳しい状況に追い込まれていた。

 すでにチーム内は来季の契約をめぐり「もう力的に難しい」「功労者だから残すべき」など論争が巻き起こっていたが、フタを開けてみれば自ら身を引く決断を下した。ある球団幹部は「こんなに早く決めるなんてなかなかない。ダメなら自分で決めるという男らしさ、潔さを感じる。正直言うと去年から(今年の活躍は)もう難しいだろうと踏んでいた。球の走りもすべてにおいてきつかった。ランディには申し訳ないが、ある意味早く進退を決めてくれて(条件面など)助かった部分はある」と指摘した。

 メッセンジャーは推定年俸3億5000万円。残留しても大減俸は確実という状況だったが、引退となればその3億5000万円が丸々浮く。下世話な話だが、球界だけでなくどの業界もコスパが悪いと問題視される時代。阪神でも推定年俸5億円の控え選手と化していた鳥谷のケースもあり「そういう意味でもランディの引退は潔かった」(球団関係者)との声も上がっている。

 自己中心的で時にワガママでもあったメッセンジャーだが、ナインの信頼は大きかった。捕手の梅野は「ランディに育ててもらった。よく勉強していたし、自分も外国人投手独特の投球を目の当たりにし、成長させてもらった。(長所である)ブロッキングも教えてもらった」と感謝し、守護神の藤川も「孤高の存在、エースでした。自分がやるんだという気持ちとプライドがあった」と絶賛した。矢野監督も「本当にここまで中心選手としてよくやってくれたと思う。功績は大きい」と頭を下げた。

 球団は縁があれば今後のポストなど何らかの形で功績をたたえる考えで、引退試合についてもCS争いを展開中の一軍の状況を見ながら検討していくという。自分の進退を迷うことなく即決したメッセンジャー。谷本球団本部長は「本当に最後まで侍でした」と評した。まさに「男気引退」だった。