去就に注目の集まる中日・松坂大輔投手(38)が衝撃告白だ。今季は一軍未勝利で、球団側が戦力としての価値を見極めようとしているのに対し“平成の怪物”は「(来季も)ドラゴンズでやれるのがベスト」と明言。今季中の実戦復帰に向けて奮闘中だ。現役続行にも強い意欲を見せているが、一方で心は揺れ動いているのか、旧知のスポーツライター・楊枝秀基氏の直撃に“禁断の二文字”も意識した偽らざる心境を明かした。

「現時点ではやってやろうという気持ちを持って取り組んでますけどね。でも自分の中で、もういいやと思ってしまえば、辞めてしまうかも分かりませんよ」

 今月13日には39歳の誕生日を迎える。プロ野球選手として、すでに峠は越えた。そう考えていても不思議ではないが、発言の主は去就問題で揺れる松坂だ。「もういいやと思ってしまえば辞めてしまうかも…」との言葉に込められた思いは決して軽くない。

 1998年に横浜高校のエースとして春夏連覇を達成し、スター街道を突き進んできた。常に世間の注目を集め、自らの発言の持つ影響力は十分に理解している。いい加減な発言をする男でないことは野球ファンなら誰もが知っているだろう。もちろん注目を集めるための発言でもない。38歳の一人の男として、正直な気持ちが口をついて出たと考えるのが自然だ。

 浴びてきたのはスポットライトばかりではなかった。新聞、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアから様々な形で報道されるなかで、いわれのない誹謗中傷もあった。それでも松坂は18歳のころから「その人にも家族があり、それを守るために仕事としてやっているだけでしょう。とがめるつもりはありません」と話してきた。

 時代はインターネット全盛となり、対面したことのない個人からも非難されるようにもなった。2017年オフにソフトバンクを退団した際にはメディアからも個人からも「在籍3年間で年俸総額12億円、登板は1試合のみ。それでも現役続行希望」と様々な視点や立場から騒ぎ立てられた。

 それでも松坂は「それは自分の責任」と反論することもなかった。そして中日に移籍した昨季は6勝を挙げてカムバック賞に輝いた。再びの手のひら返しで絶賛されても「応援してくれた皆さんに少しは恩返しできたかな」と謙虚に振る舞い続けた。

 99だった背番号は慣れ親しんだ18に戻り、完全復活を期待された今季はアクシデントや故障で一軍登板は2試合のみ。昨年9月13日の阪神戦(甲子園)で勝利してから1年が経過しようとしている中で、不本意ながら去就問題に火がついてしまった。メジャーでもソフトバンクでも同様の経験をした松坂は「またこの時期がきたな、もう慣れてますって感じです」と話すが、漠然とその状況に対峙しているわけではない。

「周囲から『お前はハートが強いから平気だろ』とか言われることもあります。でも、僕も人間。こういう状況にあって、全く平気ってわけでもない。悪意のある記事を見たり、嫌な情報が耳に入ってくればショックですよ。でも、現実として現状を理解し、自分で受け止めて、受け入れようとしています。その上で自分のやるべきことをやっている」

 松坂の覚悟は決まっている。今はまず今季中の実戦復帰を目指し、自身が「ベスト」な形だと考えている中日での現役続行に向けて人事を尽くすのみ。あとは球団側がどう判断するか――。“平成の怪物”の去就問題は最終局面を迎えようとしている。(楊枝秀基)