首位ソフトバンクは、30日から2位西武との首位攻防3連戦(メットライフドーム)に臨む。マジック点灯目前で苦手ロッテに辛酸をなめさせられ、ライバルの猛追を受けて2ゲーム差で迎える天王山だ。昨秋は逆転Vをかけて挑んだ同カードで痛恨の3連敗。その初戦で炎上したエース・千賀滉大(26)が、借りを返すべく雪辱に燃えている。屈辱をバネに成長を遂げてきた右腕には、乗り越えなければならない壁があるという。

 大一番を前に、敵地へ向かう新幹線を待つ駅のホームで千賀は静かに口を開いた。「勝つか負けるかで天と地くらいの差が出ると思っている」。そう腹をくくるのは、昨年の失敗があるからだ。首位西武に3・5ゲーム差で臨んだ昨年9月15日の敵地での直接対決初戦に先発し、5回途中7失点KO。チームはそのまま3連敗し、逆転Vを逃した。「去年のあの西武戦が僕を変えたと思う。今の僕があるのは、あの試合があったから」と振り返るほどインパクトのある試合だった。

 いまや工藤監督をはじめ、周囲は千賀を「エース」と認めているが、自身はまだまだ越えなければならない「2つの壁」があるという。一つは勝ち星から負け数を引いた“一人貯金”を2桁に乗せることだ。2016年から4年連続で2桁勝利を挙げているが、16年は勝率8割を誇りながら12勝3敗、最高勝率に輝いた17年も13勝4敗で貯金10には届かず「2年連続で貯金9で終わった時、まだ僕には何かが足りないと思った」。今季もここまで11勝6敗。「現実的に厳しい数字」となってしまった。

 だからこそ、もう一つの壁を乗り越えることに重きを置いている。それは「大一番で負けない投手」になること。2年連続で務めた開幕投手ではいずれも白星はつかなかったが、昨年は7回無失点で今年も6回無失点。「自分に足りなかったものが補えているかどうか確認できるのは、これから回ってくるビッグゲームの結果次第。そこで証明される」と、シ烈なV争いの中でのマウンドには燃えている。今回の登板に向けては「僕の野球人生で大きな試合になる」とまで言うほどだ。

 周囲が「エース」と認めようが、本人は「まだまだ発展途中。それは自分が一番分かっている」と納得していない。“収穫の秋”にするべく、結果で存在感を示すつもりだ。