コイの悩みは深い。広島は21日、マツダスタジアム内の球団事務所でスカウト会議を開き、今秋ドラフト会議の高校生候補について絞り込みを行った。苑田スカウト統括部長によると、今回リストアップした高校生は27人。注目は今夏の甲子園の主役となった星稜・奥川恭伸(石川・3年)と“最速163キロ右腕”大船渡・佐々木朗希(岩手・3年)で両投手に「抜けている」と“特A”評価を与えたのだが…。

 百戦錬磨のベテランスカウトが興奮気味に口を開いた。まず奥川について、苑田部長は「今、(プロに)入れても10勝ぐらい勝てるんじゃないか。初回から14回まで150キロ投げて球威が落ちない投手はプロにもいない。高校生でも即戦力と言える」と太鼓判を押した。一方、佐々木は伸びしろに奥川以上の魅力を感じるとした。「モノが違う。歩く姿を見ただけでスター」と表現。故障リスクを念頭に、プロ入り後も慎重な育成が必要と指摘した。

 その上で同部長は「球団が即戦力を欲しいなら奥川、余裕があるなら大船渡(佐々木)だと思う。(松田)オーナーにもそう話している」とし、大学・社会人を含めた最上位候補としては、他に明大・森下、JFE西日本・河野らの名を挙げた。

 では肝心の“総帥”の思いはどうか。松田オーナーは「ワシは佐々木派」だと明かした。“ビッグ2”の評価は、苑田部長とおおむね同じ。佐々木を評価したのは個人的に「柔らかい投手、伸びしろを感じる選手が好き」というのが理由という。

 ただ事はそう簡単ではない。同オーナーは奥川の能力も「彼はピッチングがうまい」と高く買っている。また現状の投手層が充実しているとはいい難く、明大・森下のような即戦力を望む声も根強い。だから悩む。

「スケール感からすれば佐々木がいるが、(くじ引きの)確率の問題もある。来年のローテーションを考えて、ファームに誰がいるかという問題もある。そこがクリアできるなら(佐々木に)手を挙げるという計算もできるけど、明治大の森下のようなタイプの方が入ってすぐに投げられるんじゃないかというなら、そういう考えもある」

 奥川、佐々木の“高校ビッグ2”については、今後は侍ジャパンU―18代表での戦いぶりも注視していくとした松田オーナー。今年のコイの相手は最後まで決まらない。