意地を見せることさえできなかった。巨人に3―6で敗れた阪神は、このカード4度目となる3連戦3連敗。対戦成績6勝13敗で8年連続の巨人戦負け越しが決まり、借金も今季最多の7に膨らんだ。矢野監督は「残り試合をどう戦うかが問われている。ここからどう踏ん張れるのかが大事。巨人にも残り試合でそういうところを見せたい」と必死に前を向いたが、早ければ22日にも自力CSの可能性まで消滅するピンチだ。

 そんな窮状を見かねてか、試合前にはテレビ解説で東京ドームを訪れていた掛布雅之シニアエグゼクティブアドバイザー(SEA=64)が一肌脱ぐシーンがあった。今月9日の広島戦を最後に4番を外されている悩める主砲・大山に身ぶり手ぶりを交えてアドバイスを送ったのだ。

 普段は若いコーチの多い現場への気遣いからグラウンドに出てくることはめったにないが、あまりの貧打に黙っていられなかったのだろう。「阪神の4番」の重みを誰よりも分かっているミスタータイガースは大山に「6番になって厳しいと思うがしょうがない。宿命だよ。背負わなきゃいけない。それを喜ばないと」と“心得”も伝授した。

 打撃コーチは心境も複雑だろうが、チーム内は掛布SEAによる直接指導に歓迎ムードだ。「もっと掛布さんを活用すべき。打撃論は素晴らしいし、高山や大山などは、二軍監督時代に直接指導されてお世話になっている。調子を落としている選手を見てもらうべき」(球団幹部)との声も上がっている。

 5月8日のヤクルト戦(神宮)で練習を視察した際には、不調だった糸井が助言を受けて見事に復調。翌6月に月間MVPを獲得するほど打ちまくった。残り30試合と差し迫った状況ながら“掛布効果”への期待は大きい。