オリックス管理栄養士・河南こころさん 「月刊栄養新聞」を手書きで作成

2019年08月20日 11時00分

オリ選手を支える河南さん

【球界を支える異色野球人】「プロ野球が大好きで、高校2年のころから将来は野球選手を栄養面からサポートしたいと考えていました。その夢がようやくかなった感じです」

 笑顔でこう語るのは、オリックスで管理栄養士を務める河南こころさん(45)。2017年シーズンからファームを中心に若手選手の食生活全般をサポートしている。

「管理栄養士って何をやってるの?と思われるかもしれません。私の場合は選手との対話の中でバランスのいい食生活だったり、適正量の食事が取れているかなどを確認するのが主な仕事です。食に対する意識を持ってもらいたいので、練習中でもタイミングを見計らって声をかけます。シーズン中は常に動き回っていますね」

 甲子園大学栄養学部在学中から「野球界で働く」と心に決めていた。ところが、球界で働く専門職は「狭き門」。そもそも栄養士がいない球団もある。複数球団に職を求めたが受け入れられず、卒業後は一般企業に就職するなど軌道修正を強いられた。転機が訪れたのは02年。知人の紹介を通じて森永製菓が運営する「ウイダートレーニングラボ」に所属したことだった。

 同施設はスポーツ界の一流アスリートを栄養学などからサポートする。その一員として活動を始めた河南さんは自転車競技やラグビー、バレーボールなどのスポーツ選手やダンスグループの東方神起、AAAらの体づくりも支援した。08年からの約2年間は女子フィギュアスケートの浅田真央を担当。浅田の10年バンクーバー五輪銀メダル獲得にも大きく貢献した。

「真央ちゃんのサポートをするころには『もう好きな野球には携われないな』と半ば諦めていました。それが17年に以前から知り合いだったオリックスのトレーナーの方から声をかけていただきました。人生って…分かりませんね」

 2年前から始まった球団での裏方業。数々のトップアスリートを食育した栄養学のプロはチームに新たな息吹をもたらした。その一つが“補食”の定着だ。

 どのスポーツでも一流選手は体力維持のためにある程度の食事量が必要である。その量を補うため、1日3食以外に補食を取るのが一般的。だが河南さんの着任当初はその習慣が浸透していなかった。

「他競技では当然のように行われているので、野球界の現状には驚きました。そこで、バファローズでも体のエネルギー源になる補食を取ってもらおうと、練習の合間や試合中におにぎりの提供を始めました。最初のころはなじみがなかったせいもあり、全然食べてもらえなくて、結構悩みました。でも、おにぎりを一口サイズに改良したり、焼きおにぎりの提供を始めたら、昨夏ぐらいから選手が意識的に口にしてくれるようになりました。今ではチーム首脳陣も『食べること』の大切さを理解し、練習中、試合中でも選手に補食を指示してくれる。良い傾向です」

 選手寮の食堂には17年10月から毎月1回、河南さんが手書きで作成する「月刊栄養新聞」が置かれる。アルコール摂取による肉体への影響や疲労回復の豆知識など。なかには若手選手にとって耳が痛い助言もあるが、全ては万全の体調で試合に臨んでもらうため。自筆に込める思いは選手、チームへの愛情に他ならない。

「栄養士とはいえ私もチームの一員なので、やはり一軍も二軍も日本一になってもらいたい。そして一人でも多くの選手が一軍で活躍できるよう、これからも陰で支えていきたい」

 笑顔を絶やさずこう語る河南さん。男社会に咲く一輪の花が若手チーム浮上の活力源になる。