巨人は8日の中日戦(ナゴヤドーム)で延長12回、3―3で痛み分け。5位相手にまさかの足踏みで3位の広島までのゲーム差は1・5差まで縮まった。1勝1敗1分けに終わった今カードではOBのウォーレン・クロマティ氏(65)が連日来場。熱心な指導だけでなくムードメーカーとしても暗く沈んだチームに光を差し、早くもコーチ就任への待望論も上がっている。

 負けはしなかったが、勝てなかった。5回までに主砲・岡本の4試合ぶりとなる19号2ランなどで3点を先制し、エース菅野は7回1失点と好投。ただ、8回に中川が同点に追いつかれて延長戦へ…。後続のリリーフ陣が無失点でバトンをつないだが、打線は6回以降、無安打に封じられ、勝ち越しはならなかった。

 試合後、原監督は「価値ある引き分けだと思いますね。まあ、願わくばというところはあるけれども。しっかり守ったというかね、そういうところは評価できると思いますね。負けなかったという部分でね」と前向きに評した。6カード連続の負け越しを阻止したことで2位・DeNAを1差とわずかに突き放した一方で、広島には1・5差まで接近された。

 そんななか、この3連戦ではレジェンドがチームに新風を吹き込んでいた。指揮官の依頼で名古屋遠征の3日間は特別ゲストとしてクロマティ氏が来場。打撃練習ではジェスチャーを交えて個別指導したが、実は今季最悪の6連敗を止めた7日の試合前のミーティングに加わり、ナインを鼓舞していたのだ。

 異例の飛び入り参加で、どんな言葉を投げかけたのか。クロマティ氏本人によれば「ミーティングでは『さあいこう! ショータイムだ!』と言った。メンタル的なことだね。現役時代と一緒で、自分はムードメーカーとしてみんなが集中できるよう心掛けた」そうだ。

 ナインの評判も上々だ。指揮官からの“特命”で、クロマティ氏から重点的に指導されたビヤヌエバは「まずは試すことが大事。今日、取り入れてすぐということはないと思うけど、試してみたい」と今後も継続していくという。

 日本人選手でも左打者には積極的にコミュニケーションを図った。好調のベテラン・亀井ですら「意識の話ですね。ヒントにはなります。あとはできるかどうか」とうなり、重信も「『打撃練習の時は(基本は)センター、レフトに。内角が来たら引っ張っていいけど、ファウルはダメだよ(フェアゾーンへ)ライナーで』と。数日しかいないと聞きました。聞きたいことは全部聞けました」と目を輝かせた。

 こうした状況に、球団関係者からは「何よりクロウは明るい。また近いうちに来てくれるんじゃないかな…」と再訪を期待。別のスタッフからも「巨人愛がすごいし、チームの雰囲気を変えてくれる」と歓迎ムードだった。

 指揮官が抱える一つの“悩み”は、言語も文化も違う助っ人の指導方法。クロマティ氏の環境さえ整えば、キャンプでの臨時コーチや、来季の初入閣にも“障害”はなさそうだ。