左ヒザ裏を痛めて長期離脱していたソフトバンクの柳田悠岐外野手(30)が8日、ウエスタン・広島戦(筑後)で実戦復帰を果たした。4番・DHでスタメン出場して2打席に立った。死球と空振り三振だったが大きな一歩。試合後は4か月の苦しいリハビリ期間を思い起こして涙を流した。果たして一軍復帰はいつになるのか。一軍の優勝戦線も緊迫する状況で前倒しの声もあるが、工藤監督の決断は――。

 予定された2打席を終えて報道陣に対応した柳田が思わず感極まった。4月7日のロッテ戦(ヤフオク)で左ヒザ裏(左半膜様筋)を痛めて戦線離脱。4か月にわたってリハビリを続けていた。

 言葉に詰まりながら「治るかどうか分からないという不安な気持ちがありました」と涙した。「4か月を思い出したというか…。よう打席に立てたなと」。言葉を絞り出してタオルで顔を覆った。球場を離れる際は「やってもうた。過去最大のやらかし!」。こう照れ笑いを浮かべたが、それだけ大きな故障に苦しんだ期間だった。

 試合では広島・ケムナと対戦。1打席目は右臀部付近への死球で、2打席目は一死一、二塁の場面で三球三振に倒れた。グラウンドでは終始楽しそうな表情を浮かべていた。試合に出られたことが大きな第一歩だった。

 次の焦点は一軍復帰時期になる。ただ、首脳陣にとっては難しい選択となりそうだ。柳田は依然としてリハビリ組。脚の状態は万全ではない。今後の展望については柳田も「守備に就いたりトレーナーと相談しながら。メドとかはないですね」と話す。前提として守備ができてからと考えており、その上でファームで10試合ほどは出場したいとの思いもあるという。その場合、早くて23日のロッテ戦(ZOZOマリン)からとなる。

 一方で前倒しは十分あり得るとの見方がもっぱらだ。今季は一軍で休養させながら起用していくケースも多い。「間違いなくそれより早く呼ばれる可能性は高い。現在の打線の状況ならなおさらでしょう」(チームスタッフ)。もともとチーム内には「打線にいるだけで相手に与える迫力が違う」と打撃オンリーも選択肢に挙がっており、一軍首脳陣の中にも「(復帰まで)10試合じゃなくて10打席ほどで」との期待がある。当然「怖いのは再発」との声もあるが、V争いが佳境に迫る中でどうなるか。

 今回の離脱に際しては来季中に海外FA権を取得できる日数との兼ね合いもあった。チームがCSファイナルに進出して最終戦までもつれたとして、故障者特例込みで今月12日に一軍登録を果たせば、来オフのメジャー挑戦も可能性が残ったが、現実的にそれはなくなった。柳田の次回出場予定は13日のウエスタン・中日戦(佐賀)。柳田もチームに貢献できる状態での復帰だけを見据えており「なるようになるんじゃないですか。そこ(日数的な部分)は考えても仕方がない」とも話している。

 今後について工藤監督は「報告を受けて今後のスケジュールを聞いてからですね」と話すにとどめた。最終的には本人との話し合いでゴーサインが出されるが、Vの行方を左右すると言っても過言ではない切り札を指揮官はいつ出すか――。