【赤坂英一 赤ペン!!】7月30日の広島戦で1000勝を達成したのはいいけれど、翌日から5連敗して5カード連続負け越し。正直、原監督らしいな、と思った。

 1000勝達成直後、お立ち台で「就任1年目の2002年は4連敗がスタートで、1勝の重みを教えられた」と語った原監督。実際は4連敗ではなく3連敗だったが、本人が勘違いしても不思議はないほど、監督1勝目は確かに難産だった。

 原監督は宮崎キャンプ中、左打者の清水を長嶋監督時代の2番から1番に上げると宣言。ところが、就任1年目の阪神・星野監督が開幕2連戦で井川、ムーアと左投手を先発させると知り、開幕スタメンの1番を突然右打者の二岡に変更した。

 結果、阪神に2連敗し、続く中日3連戦の初戦も負けて3連敗。当時よく巨人にカミナリを落としていた渡辺オーナーが「きょうも負けるようだと不安だな」と発言した中、4試合目でようやく監督1勝目を挙げた。

 原監督のことだから大感激するかと思いきや「1勝は1勝。これから積み重ねていくだけ」と意外にも淡々とコメントして選手、コーチの待つロッカー室へ消えた。が、その直後「イエーーーイッ!」と、原監督の雄たけびが記者のいる廊下にまで響き渡ったのだ。

 コーチ陣とはがっちり握手を交わしたそうで「監督はすごい力してるね。手が痛いよ」と斎藤投手コーチが苦笑いしていたほど。巨人はその後勢いに乗り、首位独走で優勝するのだが、幕切れがまた締まらなかった。

 2位ヤクルトが負けて優勝が決まった日、巨人は阪神にサヨナラ負け。延長12回、FA移籍した前田(現本紙評論家)の暴投で敗れたのだ。優勝チームのサヨナラ負けは史上初の出来事だった。

 これで日本シリーズは西武に勝てるのかと思ったら、今度は初戦から4連勝で日本一。原監督は「これはまだプロローグにすぎません」と大見えを切った。巨人OB評論家に「プロローグをエピローグと間違えるんじゃないかと思いましたよ」とちゃかされると、悪びれもせずこう言っている。

「何? そのエピローグって、どういう意味?」

 結局、あれから17年後の今年までエピローグを迎えることなく、1000勝を達成。締まらないようでいて締めるところはしっかり締めていた原監督、今季もそう簡単に首位戦線から脱落したりはしないはずだ。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。毎週金曜朝8時、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ!」出演中。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」(講談社)などノンフィクション増補改訂版が電子書籍で発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」(PHP文庫)など。最新刊は構成を務めた達川光男氏の著書「広島力」(講談社)。日本文藝家協会会員。