まさに踏んだり蹴ったりだ。巨人は1日、東京ドームでの広島戦で投打に精彩を欠き、2―8の大敗。4カード連続の負け越しとなったチームには緊急事態が発生した。エース級の活躍を見せてきた山口俊(32)がこの日、右ヒジの不調で出場選手登録を抹消された。右腕の快投の裏では、かねて“故障持ち説”もささやかれていただけに、首脳陣には慎重な判断が求められている。

 試合の流れが一気に相手に傾いたのは1―1の7回だった。先発メルセデスが無死一、二塁のピンチから1点を勝ち越されて降板すると、火消しを託された高木、澤村も勢いにのみ込まれて一挙4失点。2―5の9回には6番手の大竹が代打・坂倉の3ランを浴び、完全に息の根を止められた。

 攻撃面では5試合ぶりに岡本を4番に戻すなど打順を組み替えたが、2点止まり。試合後、原監督は「得点も含めて、いろんな意味でまだ課題はありますね。明日からまたやっていくということ」と前を向いた。

 この日は3・5差に迫る2位のDeNAも敗れたため、2日からの直接対決で首位から陥落する可能性はなくなったが、試合前にはショッキングな情報が飛び込んだ。ここまでリーグトップの11勝(2敗)を挙げ、同1位の防御率2・55をマークしていた山口が「右ヒジ周囲の筋肉の張り」を訴えて登録抹消。ただでさえ、苦しい台所事情の先発陣にとっては大打撃だ。エース菅野が本調子にないなか、開幕からフル回転。6日からチームは9連戦も控えるだけに、ますます難しいやりくりを強いられる。

 前夜に山口と電話で話したという宮本投手総合コーチによれば「本人は『大丈夫です。次、行けます』と言ったんだけど、僕たちがサイドブレーキを引きながら止めている感じ。(症状は)そんなに重くない。(登板を)1回飛ばして帰って来てくれれば」と見通しを示した。

 ただ、いくらタフネスがウリの山口とはいえ、やはり生身の人間だ。シーズン序盤の4月から中5日登板をこなし、投球数もリーグ最多の1990球。チームを首位に浮上させる快投を演じてきた一方で、実は「開幕当初と比べて、投球時にどんどん腕が下がってきているのは気がかりだ。何か抱えているのではないか」とささやかれていた。

 チームスタッフからは「首脳陣の判断は『一般的に腕が下がることは良くないとされるけど(山口)俊の場合は球も悪くないし、実際に結果も出ている。意図的ではなく、自分が投げやすいポイントで投げている。だから、あえて言わない』というものでした。ですが、何らかの原因があるから腕が下がる。俊は弱音を吐かない。もし、これが予兆だったとするなら、大事な時期に抹消するまでのことにはならなかったのでは?」との指摘もあった。

 指揮官は「早めの“夏休み”。(最短の)10日間で帰ってくることを期待している」としたが…。勝負の8月に山口が長期離脱となれば、それこそ一大事。右腕の力を借りたいのは当然だが、首脳陣は山口の状態を慎重に見極めていく必要がありそうだ。