最速158キロを誇り、全米ドラフト上位候補ながらソフトバンクに新加入したカーター・スチュワート投手(19)が9日、三軍戦(筑後)で実戦デビューした。社会人相手に2回1安打無失点。来日初実戦を見守った本紙評論家の加藤伸一氏は、右腕の今後の課題を指摘するとともに、かつて育成入団した鷹のエース・千賀が歩んだ育成ロードの踏襲を提言した。

 九州三菱自動車戦に先発したスチュワートは、初回いきなり先頭打者に二塁打を許したが、後続を打ち取り無失点で切り抜けると、2回は三者凡退。最速は151キロだった。右腕は「緊張と興奮が入り交じった中でしっかり投げられてよかった。状態は9割くらい。これから投げるたびに球速も上がるし、感覚も良くなっていくと思う」と気持ち良さそうに汗を拭った。次回以降も三軍戦を中心に実戦を重ねていく予定だ。

 そんな最速158キロを誇る金の卵には球団内から「即戦力級」の期待も寄せられているが、現在の実力はどれほどのものなのか。スチュワートの初実戦を生観戦した加藤氏は「現状は一、二軍で通用するレベルにない。投げることも、それ以外の分野も時間をかけて土台をしっかりと作っていく必要がある。率直に3年目までに一軍に顔を出してくれれば早いくらいではないか」と評した。

 その上で加藤氏は「まだ19歳で体幹が弱く、下半身もまだまだなので直球も変化球も球が高い。投球のフィニッシュが一定ではないことからも弱さを感じる。まずは体づくりからじっくりやることが大事」と指摘。体幹をうまく使えず、制球がまとまらない傾向は、高卒ドラフトで入団する日本人と差がないという印象を受けたという。

 では6年契約の中でどう右腕を大成させていくか。加藤氏は2011年にソフトバンクの二軍投手コーチに就任し、千賀や岩崎らを一軍戦力に押し上げた。同氏は当時を振り返りながら「スチュワートの育成は、千賀をイメージするといい」と指針となる“成功例”を挙げた。

 育成入団の千賀は1年目、故障などもあり体づくりをメインに三軍でみっちり鍛えられた。2年目に支配下登録されるも主戦場は二軍。3年目に中継ぎとして頭角を現すが、フロントも現場も焦らず「大器」を地道に育成した。故障がちで脆弱だった千賀が先発として花を咲かせたのは6年目。その間、投げる以外の分野も習得した。

「千賀は球の質やインパクトでいえば、今日見たスチュワートよりも上。それだけいいものを持っていたが、鍛えられた強豪校ではなく県立高校(愛知・蒲郡高)出身というのもあって、クイックやフィールディング、けん制などに難があった。時間をかけて技術を身につけたことで、完成された投手に近づいた」と加藤氏は言う。

 けん制やフィールディングは日本の細かい野球に不慣れで、上背があって手足が長い外国人投手が不得手な分野だけに「スチュワートも一足飛びでいくと後で苦労する。クリアできるまで下でOK。千賀方式で地道に鍛えれば、スケールの大きな投手に必ずなれる」とも提言した。

 身長198センチで160キロに迫る剛速球を持つスチュワート。注目を一身に集めながらどんな成長曲線を描くか楽しみだ。