巨人・菅野智之投手(29)が2日の中日戦(東京ドーム)で今季初完封で8勝目(4敗)を挙げた。2回途中でKOされた前回6月23日のソフトバンク戦での屈辱を晴らす快投に「エースの面目躍如」「完全復活」と喜ぶ向きもあるが、チーム内には依然“休養勧告”を促す声も根強くあるという。一体どういうことなのか――。

 前回登板で立ち上がりから制球難だった菅野を「リズムもへったくれもない」と切り捨てた原辰徳監督(60)だが、それをはね返す完封劇に「今日は爪先から指先まで何となくロスのないパワーというのが、プレート目がけて行っているように見えましたね」と満足げ。「非常にいいキッカケ。一歩踏み出したということでしょうね。エネルギーを結果としてしっかり残すというのが大事でしょうね」と今後の巻き返しに期待を寄せた。

 ところが、肝心の菅野に歯切れの良さがない。「コンディション自体はすごくいい方向にきていますし、どんどん良くなっていっている部分はある」と言いつつも「それでもやっぱり万全じゃない中でもマウンドに上げてもらっている」と控えめ。自身の状態についても「『痛い』とかそういう中で投げるというよりも、現状の、その日のベストのフォームだったりとか、配球だったり、そういうのを心がけてやっています」と語るなど、負傷箇所の腰への不安が完全に払拭できていないことをうかがわせた。

 この日は115球を投げた。首脳陣はそのまま中5日で8日の阪神戦(甲子園)に登板させる予定で本人もその気だが、チーム内からは「しっかり休ませた方がいい」との声が消えない。腰をかばうゆえに左肩の開きが早くボールの出どころが見やすい、直球やスライダーが逆球になったり高めに浮く、との懸念は以前から聞かれていたが、チームスタッフの一人は「悪循環にならないですかね」と語り、こう続けた。

「マウンドですよ。東京ドームのマウンドが(メジャー仕様で)硬くなっていますからね。ただでさえ下半身に負担がかかるマウンドで、下半身の粘りで投げる菅野が腰をかばって投げているわけだから。変な方向に行けば、今度こそ肩ヒジに影響が出ますよ。しかも次の甲子園だって硬くなったわけだし」

 仮にそれを自覚していたとしても、エースの責任を背負う菅野が自ら休養を申し出ることはあり得ない。「今日勝ったことは終わったことなので、しっかり切り替えて。次、前半戦最後の登板になると思うので、自分がどうのこうのよりもチームが勝つようなピッチングを心がけたいです」と殊勝に語った背番号18。すべての不安から解放される日は来るのか。