注目ルーキーが期待以上の輝きを見せた。日本ハムのドラフト1位・吉田輝星投手(18)が12日の広島戦(札幌ドーム)にプロ初登板初先発し、5回1失点でプロ初勝利を挙げた。セ・リーグ3連覇中の強力赤ヘル打線を寄せつけず、相手エースの大瀬良に投げ勝つ大金星。今後の伸びしろと起用法が大いに楽しみになるなか、首脳陣が見いだした「結果以上の新たな可能性」とは――。

 まさに圧巻の投球だった。初回に一死満塁のピンチを招いたが、落ち着いたマウンドさばきで無失点スタート。直球で押しまくるスタイルにもかかわらず、打者は差し込まれてのファウルを繰り返し、失点は2回に許した1点のみ。

 終わってみれば5回84球を投げ、4安打4三振2四球。リードを守って降板、チームは2―1のまま継投で逃げ切った。プロ初勝利を手にした吉田輝は「率直にうれしいです。(満塁の危機は)直球で押していって打たれたら仕方ない、と。しっかり打ち取れてよかったです」。栗山監督も「よかったです。新しい風を持ってきてくれた感じがしました」と評価した。

 吉田輝の直球は最速147キロだったが、常時142~3キロ。にもかかわらず、広島打線は140キロ台前半の直球をまともに捉えることができなかった。

 高橋憲投手コーチは「同じ直球でも、通常の軌道の球と、カット気味に動くものがあった。これが良かったんだと思うよ」と、独特の直球について言及。吉田輝本人は「140キロ台の球は直球。130キロ台の球は意識して投げたスライダーやツーシームです」と話し、直球については意識せず変化してしまうボールがあるという。

 吉田輝の最速は高校時代に記録した152キロだが、本人によると現在は「100%の力で投げると崩れるので、今はバランスを意識したほうがいい」と抑え気味にしている。高橋憲コーチは「150キロが出なくても、これ(動く直球)が意識して投げ分けられるようになれば、今以上に好投できるだろうね」と、今後の伸びしろに期待する。

 また、同コーチは「あえてまだ使っていない球種もある。それが選択肢として増えれば、投球の幅も間違いなく広がる」と、持ち球の一つであるフォークに現在は制限をかけていることを明かした。浮き上がる直球に落ちるボールが加われば、まさに鬼に金棒だ。

 では、今後どう育てていけばいいのか。本紙評論家の遠藤一彦氏は「真っすぐを抑え気味にしているのには大賛成。球速を出そうと思えばどうしても力も入り、速くてもキレのないボールになってしまう。スピンのかかったキレのあるボールを投げるには、余分な力を抜いてリリースの瞬間での“ひと押し”が大事なんです」と、現在の吉田輝の取り組みを高く評価。

 その上で「142~3キロでもてこずるのに、二軍でじっくり体をつくりながら、バランス重視のフォームで147~8キロのキレのあるボールを常時投げられるようになったら、大変なことになりますよ。ローテーションに入るのは8月以降でいい。終盤の大事なときに、吉田が出てきたら相手にとってこれ以上の脅威はないでしょう。今からポストシーズンにかけての活躍が楽しみになってきました」と今後の育成プランを予測した。

 同じ真っすぐでも、エンゼルス・大谷翔平とはまた違ったワクワク感。昨夏の甲子園を沸かせたスターがプロの世界でしるした第一歩は、その結果以上に野球に携わるたくさんの人たちを魅了した。