広島が黄金ルーキーの“魔球”に白旗を掲げた。12日の日本ハム戦(札幌ドーム)はエース・大瀬良が8回2失点と好投したが、自慢の打線がプロ初先発の高卒新人・吉田輝から5回までに4安打で1点しか奪えず、1―2で手痛い連敗を喫した。

 パワー勝負には自信を持つ赤ヘル打線が、来ると分かっていながら振り遅れ、力ない飛球を打ち上げた。試合後、吉田輝の印象を聞かれた選手は驚き交じりに右腕の勝負球を絶賛。セの王者を戸惑わせたのは、主砲の鈴木いわく「見たことのない真っすぐ」だった。

 吉田輝と対戦した打者の話を総合すると、多く聞かれたのがスピードガン以上の体感速度。安部は「ガン以上にズドンときていた」。西川は「久々にあんな直球がいい投手を見た」と舌を巻いた。

 加えて手を焼いたのが、予測がつかない微妙な変化。鈴木は「〝真っスラ〟気味にきたと思ったら、きれいな回転できたり…。(対応が)難しかった」。菊池涼も「ちょっとクセのある真っすぐで、カット気味にきていた。初対戦だし、その情報は入っていなかったので、みんな受け身で構えてしまった」と証言した。

 移籍後初の1番に座り、吉田輝から2安打1打点とベテランの意地を見せた長野がたたえたのは、新人らしくない堂々としたマウンドさばき。「落ち着き方というか、ルーキーっぽくない感じはすごくしました。セットポジションでも長く球を持ったり、早く投げてみたりしていましたからね」と評した。

 投げ合った大瀬良も「躍動感がある投球をしていましたね」。極め付きは迎打撃コーチのひと言。「力負けと言っていい」と素直に完敗を認めるしかなかった。

 昨夏甲子園の準V右腕は、対戦前まで広島の眼中に全くなかった。関係者によれば「斎藤佑と同じニオイがする」とドラフト候補にも挙がらなかったという。だが手合わせを経て評価は一変。今度の人気者はモノが違ったようだ。