【ネット裏・越智正典】広島が5月に11連勝した。5月24日からの巨人との首位攻防戦も2勝1敗と突き放し、5月26日には2位巨人に2ゲーム差をつけた。見事というよりほかにない。4月27日、神宮球場でのヤクルト戦の試合前の練習は、これから始まるカープの見事なドラマをよく描いていた。開演のベルが鳴っていた。

 この日、神宮球場は東京六大学との併用日で、アマプロ併用日は何かと慌ただしい。放送席の窓が開く。担当記者、各局担当が両監督の談話を取り始める。ニッポン放送の煙山光紀アナウンサーは担当のときは、毎日同じルートで来ない。JR、地下鉄…下車駅を変えている。お客さんの動きを見るためだ。

 広島が、右翼うしろの室内練習場での練習を終えて、神宮球場に移動しチーム練習を始めたときだった。開幕から出遅れていた鈴木誠也は打撃練習の打席に入らなかった。真っ先に飛び込んでもおかしくないのに、繰り返し、繰り返し、ベースランニングを続けていた。「下(下半身)をつくっている」。記者団が注目した。

 鈴木誠也が打撃練習の打席に入ったのはチームの一番後だった(ニッポン放送)。それは実力本位のカープの姿そのものだった。彼はそう実践した。鈴木誠也は8回になって代打に起用されたが三振に倒れた。しかし翌日、3安打を放った。

 本紙は5月15日発行で「赤へルの4番に侍指揮官がゾッコン」とお伝えした。「侍ジャパンの稲葉篤紀監督(46)が14日、広島が9―4でヤクルトを制した一戦を視察。初回の先制犠飛を含む1安打1打点でチームの3連勝に貢献した、主砲鈴木誠也外野手(24)に熱すぎる視線を送った」。堀江祥天記者が結んでいる。「コイの主砲に目は最後までハートマークだった」

 鈴木誠也はあっという間に打率、打点で1位。彼を獲ったカープのスカウト統括部長苑田聡彦に会いたくなった。鈴木誠也は二松学舎大付高の2年生のときは、東京ではちょっとしたピッチャーだったが、全国的には無名。それなのに、打者としてどこに目をつけたのか、教わりたくなった。

 以前「毎日、一生懸命働いているお父さんにほれました」とつぶやいていたことがあったが、改めて教わりたくなった。が、どこにいるのか。昔、どこにいるのかリル…と津村謙が「上海帰りのリル」を歌ってヒットしたことがあるが、どこにいるのかソノダである。話が古すぎますね…。

 5月26日、明治大が対法政大7点差をひっくり返す逆転勝利(8対7)で優勝を決めた。明大OB村山忠三郎にお祝いの電話をすると、村山がひょいと言うのであった。

「4月でしたか、苑田スカウトは東都大2部の神宮第二球場にいましたよ。(見る人も記者さんも少ない)この球場には宝物がたくさんありますよ…と言って…」

 =敬称略=(スポーツジャーナリスト)